男子72キロ級は宇城元(48=順大職員)が176キロの日本新で優勝に花を添えた。

80キロ級から階級を1つ落として出場し、166キロ、171キロに成功。2度の優勝経験を持つ樋口健太郎(48=フリー)が3回目を170キロに抑えたことで優勝が決まった。そして、最終試技で176キロまで重量を伸ばし、樋口の持っていた175キロの日本記録を1キロ上回った。

80キロ級の186・5キロと合わせて2階級のレコードホルダーになった宇城は言った。「コロナでトレーニングができない時期に、もう1度競技と向き合いました」。16年、18年に痛めていた左肘の手術を受けた。その結果、支えられる重量が変わってきたという。「今は72キロ級の方がパラリンピック出場には近いと思っています」。

昨年夏から5カ月をかけて約8キロの減量に取り組んだ。筋力を落とさないように昼間にしっかり食べ、夜は食事を控えることで転級に成功し、この日のパフォーマンスに結びつけた。

今大会は東京パラ出場を争うランキングの対象外だが、176キロは12位に相当する。04年アテネ、12年ロンドンに続く代表へ圏内の8位以内に浮上するためにはは約10キロの上積みが必要になる。日本選手が出場するランキング対象大会は3月の英マンチェスター、6月のUAEドバイのW杯2大会。「今回のパンデミックで各国の選手たちがいろいろ考えて行動すると思う。海外の選手の動向を見ながらやっていきたい」。3月は72キロ級で挑むが、6月は80キロ級も含めてターゲットを絞るという。

「日本記録にはこだわっていない」と話した樋口は、W杯へ向けた調整を優先し、160キロ、165キロ、170キロの3本に成功し、宇城の重量には目もくれなかった。「この階級では樋口さんが強く、その存在は大きい。ライバルとして日本のレベルを引き上げていきたいし、勝ちたいですね」。日本を代表するリフターの宇城が、新たな戦いに挑む。【小堀泰男】

◆パラ・パワーリフティング 下肢障がい、低身長の選手が対象で、台上にあおむけになった状態でバーベルを押し上げて重量を競うベンチプレス競技。東京パラでは男女各10階級が行われる。出場標準記録突破、国際パラリンピック委員会指定の国際大会出場、東京パラランキング8位以内の条件を満たした男女160人に加え、推薦選手20人の計180人が出場予定。