東京パラリンピック代表に内定しているパラアーチェリー女子W1(車いす)の岡崎愛子(35)が26日、一般財団法人の「日本財団ボランティアサポートセンター」主催のオンライン講演会で競技との出会いを振り返りながら、なりたい自分の姿を思い描くことの大切さを訴えた。

乗客ら107人が死亡したJR福知山線脱線事故に遭い、首から下にまひの障がいを負った。生死の境をたどった経験から、生き方に変化が生まれた。1つ1つ自分の決めた目標をこなしていく姿に、参加者から共感の声が相次いだ。

19歳だった岡崎は2005年4月25日、通学途中に事故に遭った。「大学に1番近い車両が1両目だったので」と乗車していた快速電車は、カーブに制限速度を大幅に超える116キロで進入し、曲がりきれずに脱線。線路脇のマンションに衝突する大惨事になった。「搬送された病院では人工呼吸器を付けていましたが、息がしづらく、まるで24時間おぼれているような感覚でした」と振り返る。

1年近くの長期間にわたる入院生活。「このまま死ぬんじゃないか」と不安になりながらも、家族や友人のことを思い返すと楽になった。どれだけ生きたのかより、どう生きたか。生死の淵をさまよう出来事を経験し、生きる事への考え方が変わった。退院後は服のボタンを止めるにも、お風呂に入るにも介助が必要になったが、周囲のサポートを借りながら自分らしく歩んできた。

パラアーチェリーと向き合う日々や事故を伝える講演会などこれまでの多忙な日々を語りながら「工夫と切り替えで、障がいがあっても生き生きとした人生を歩める」と実感を込めた。

もとも体を動かすことが好きで、母から勧められて8年前に始めたパラアーチェリー。最初は弓を引くにも事故の影響で握力がないため苦戦したが、1日120、130本近く打つなど練習に打ち込みながら、週2、3回フィジカルトレーニングをして技術を磨いている。

初めてのパラリンピックで目指すのは表彰台だ。1対1の対戦形式で行われる競技において、「W1クラスは最も障がいが重いクラス。最後までどうなるか分かりません」と種目独自の見方を説明した。【平山連】