また1つ、松山英樹(32=LEXUS)が日本ゴルフ界に新たな歴史をつくった。首位と3打差、3位と2打差の4位から、逆転で銅メダルをつかんだ。6バーディー、ボギーなしの65と6つ伸ばし、通算17アンダー、267。日本人男子初のメジャー制覇を果たした21年マスターズに続き、日本人男子初の五輪メダルに輝いた。
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五輪初出場だった前回の21年東京大会は、わずかにメダルに届かず4位。4年越しの雪辱を果たした。ツアーなら悔しさしか残らない3位に、満面の笑みを見せた。表彰台に立った松山は、歓声に左手を大きく掲げて応えた。首から提げた銅メダルをじっと見つめた後に、堂々と胸を張った。メダルを取った感想を求められると「うれしいです」と、素直に話した。大混戦の中、周囲のスコアが目まぐるしく動いた終盤、パーを並べた。最終18番で3メートル余りのバーディーパットを外し、悔しさを隠さなかった。それでも耐えて、我慢の末につかんだ松山らしい五輪メダルだった。
4番から3連続バーディーで猛チャージをかけた。いずれもパー4の4番は第2打を2・5メートルにつけ、5番はティーショットを大きく曲げながら、7メートルの長いパットを決めて伸ばした。6番は再びショットで奪うバーディーで、第2打を3メートルにつけて伸ばした。セカンドショットとグリーン上がさえた。この時点で2位浮上。その後は苦しみながらも耐えて着実に伸ばし、表彰台の一角をとらえた。
メダルの思いは胸に秘め続けていた。21年東京五輪で、松山は銅メダルを争った7人によるプレーオフに敗れて4位。以来、五輪メダルへの思いを口にしたことは、ほとんどなかった。3年前に五輪に初出場し、メダルの重さを痛感したからこそ。21年末に松山は東京五輪を振り返り「僕らは毎年、メジャーが4つあるけど、五輪が1番注目される種目の選手は五輪に懸けている。そこでダメだったとしても、それだけで評価されるのはどうなのか。初めて出たからこそ感じた」と語っていた。長期間懸けて五輪に臨む選手の思いを知ったからこそ安易に「メダル」を口にしなかった。
それがパリ入り後に「3年前以上の結果を必ず出せるように頑張りたい」と、雪辱のメダル獲得を誓っていた。さらには「東京で、プレーオフで負けてメダルを取れなかった悔しさは今でも覚えている」と力説。オリンピアンとしての決意が固まった。軽々しくは口にできなかった「メダル」を目標に掲げ、退路を断って有言実行を果たした。
第1ラウンド(R)は、2位に2打差の単独首位発進だった。そこから第3Rを終えて4位後退。それでも最終Rで息を吹き返してメダルを奪った。勝てない時期があっても、4年ぶりの復活優勝が、日本人男子初のメジャー制覇となった21年マスターズ。苦しんだ先に新たな歴史を刻む、松山のゴルフ人生を象徴するような銅メダルとなった。



