巡ってきたチャンスをものにして、失いかけた夢をつかみたい。バスケットボールBリーグ川崎ブレイブサンダースの辻直人(30)が6日までに書面で取材に応じ、1年延期となった東京オリンピック(五輪)への思いなどを明かした。

青学大から加入2年目の13年から日本代表に選出されてきた。昨年のワールドカップ(W杯)予選でも、主力として日本の21年ぶりの自力出場に貢献した。しかし、9月の本大会では、リーグ戦での左肩のケガもあり、コートに立てなかった。今年2月、1年ぶりに代表合宿に招集されたが、若い選手の台頭もあり、代表争いは激化。そんな中、東京オリンピック(五輪)の1年延期が決まった。辻は、どう捉えているのか。

辻 この1年、自信というものを失っていたので(五輪の延期は)僕にとってはとても大きなチャンス。それと同時に、この1年で取り戻さないと、今後のバスケット人生も失ってしまうという危機感もあるので、今までよりも高いモチベーションで過ごしている。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で自宅での生活が続く中、自分の体と向き合い、新たにヨガにも取り組んでいるという。

辻 体だけでなく、心もスッキリするのが分かるようになってきた。弱点である股関節の柔軟性を出すためのストレッチも、しっかりやっている。

川崎の一員としては「賛同してくれるなら一緒にやろう」という主将の篠山の呼び掛けに応じ、チームスタッフに対する寄付活動に加わった。さらに個人では「医療関係や、物流関係、飲食関係の皆さんがとても大変な状況だというニュースを聞いて、その中で自分も何かできないか」と思い立ち、オンラインでの交流会を開き、お世話になっている飲食店に会費を寄付する活動を行っている。

練習ができない子どもたちや、インターハイが中止となった高校生に対するメッセージについて聞くと、力強い言葉が返ってきた。

辻 自分を見つめなおす良い機会。この状況が改善された時の目標や、なりたい自分を決めて、前向きにその目標に向かって過ごすことが大事だと思う。全国大会というのは、僕にとって大きな経験値だけでなく、悔しさや喜びも与えてくれた。(中止は)とても残念だけど、これまで過ごしてきた時間や仲間は、とても大きな財産になると思う。その財産はまた大きなチャンスや経験になって返ってくる。決して投げ出したりせず、前向きに日々前進していってほしい。

川崎一筋9年目。19-20年シーズン、チームは中地区を独走し、日本一を視界に捉えていたが、3月にリーグが打ち切りとなった。10チームずつの2地区制となる来季、20-21年シーズンも、チームの中心として引っ張りながら、代表活動につなげる。

辻 来季は東地区で激戦が予想される。その中で活躍すること、そして勝利に導くことが僕の使命だと思う。自信を持って戦い抜いて、最後にチャンピオンという称号を得たい。

昨年の悔しい思いを力に変え、お預けとなった日本一に輝き、来年の夏、東京五輪のコートに立ちたい。【松熊洋介】