東京五輪・パラリンピック延期の観測が強まる中、11年サッカー女子W杯優勝の「なでしこジャパン」が26日に始まる聖火リレーで務めるはずだった第1走者を見送ることが23日、分かった。大会組織委員会は国際オリンピック委員会(IOC)が定めた延期検討期間の4週間は、聖火をランタンに入れて車で運び、ランナーは走らせない新たな方針も固めた。

同日、組織委員会の武藤敏郎事務総長は聖火リレーの中止はないと明言した。

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聖火リレーは、復興五輪を重視し、福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」をスタートする。「なでしこジャパン」は震災が起きた年に世界一となり、まさに復興五輪の象徴として、第1走者を務めるはずだったが現役選手もおり、新型コロナウイルスから身を守る観点から、その計画は見送りとなる。

当時のメンバー川澄奈穂美は「米国在住のため移動時にリスクが高いこと、自分が感染しない、感染源にならないこと」と辞退するコメントをツイッターに載せていた。

組織委幹部はこの日、聖火リレーは日程通り実施するとしたが、IOCが大会開催の結論を出すまでは、ランナーは走らせず、ランタンを車に積んで巡回することを認めた。一般ランナーの参加も取りやめる。一方で組織委関係者によると、なでしこジャパンを始めとした同期間のランナーには「救済案も検討したい」と、別の日程で走ってもらう考えを示した。

走者や自治体からは困惑の声が噴出している。初日の26日に走る同県広野町の西本由美子さん(66)は「見る人も走る人も、中途半端な気持ちになってしまう。(延期かどうかは)リレー開始までに判断すべき。翻弄(ほんろう)されているようで、複雑な気持ち」と訴えた。

福島では既に出発式が無観客となったほか、フラダンスや県産食品特設ブース設置が見送りになるなど、自治体の関連行事が相次いで中止になっており、関係者は落胆している。

4月8、9日に予定される三重県の鈴木英敬知事は「(五輪が)延期するかもしれない状況でやることが本当に機運の醸成になるのか」と予定通りの実施に疑問を投げかけた。6月3日から予定の富山県の担当者も「組織委からは何も言われておらず、指示前に動くことはできない。少しでも早く連絡してほしい」と求めるなど、現場では不安、疑問、戸惑い、混乱が急速に深刻化している。