国際オリンピック委員会(IOC)と東京オリンピック(五輪)・パラリンピック大会組織委員会が、東京大会の延期検討を認めた。年内、1年、2年と延期の時期は決まっていない。どの時期に延期するにせよ、さまざまな課題が発生する。

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延期となれば運営主体の大会組織委員会、主催都市の東京都に無数の課題が迫ってくる。晴海の選手村(中央区)は大会後に改修し、23棟のマンション約5600戸として売り出す。既に販売済みの物件がいくつもあり、23年3月に入居が始まる予定。居住中の住居を売りに出す購入者もいる中で、家賃などの補償が発生する。ある大会関係者は「選手村の補償問題がかなり悩ましい。莫大な補償料が発生する恐れがある」と指摘する。

メインプレスセンター、国際放送センターが置かれる東京ビッグサイト(江東区)は、東京大会による借り上げで「展示場不足」が問題視された。首都屈指の大型展示場を再び借り受けるとなれば、業界関係者だけでなく、世論の批判を浴びる恐れがある。当然、展示予定の事業者には、膨大な補償料も発生する可能性がある。

各競技会場も同様の問題が発生する。各施設の予約状況などを勘案すれば、1年後よりは、2年先の方が抑えやすいという考え方もあるだろう。

21年には陸上や水泳の世界選手権が既に予定されている。22年はサッカーW杯カタール大会があるが、開催時期は夏ではなく11、12月。東京五輪を夏に持ってくれば被りはしないが、五輪代表とA代表の日程が切迫し、課題は残る。同9月には中国・杭州でアジア大会も予定されている。

人件費も重くのしかかる。大会組織委員会の職員数は年初時点で3000人を超えている。大会本番が近づき1年間、半年間という短期でも職員を採用してきた。ある組織委幹部は「延期でも解雇するわけにはいかないだろう」と、予定していなかった人件費が一気に膨らむ。

これらの理由から「延期にしてもできるだけ早い時期にした方がいい」と話す、大会関係者もいる。しかし、年内の延期だと、新型コロナウイルスがどれだけ終息しているかが分からず、「再延期」を検討しなければならない可能性も出てくる。

既に決まっている57%の五輪代表も延期の時期によっては、選び直しが迫られる。そうすればスポーツ仲裁裁判所(CAS)に駆け込む選手も少なくないだろう。どの時期に延期しても、いばらの道であることは変わりない。【三須一紀】