国際オリンピック委員会(IOC)は24日、今月3度目の臨時理事会を開き、2020年東京オリンピック(五輪)・パラリンピックの延期を承認した。

安倍首相とバッハ会長の合意を受け、遅くとも21年夏まで1年程度。舞台はどうなるのか。組織委の森会長が「1番の課題」と挙げていた会場の再確保について、日刊スポーツは「競技会場」に特化して全43会場を調査。膨らむ追加経費など障壁は多いが、秋など年内や22年よりも来年への1年程度が現実的だった。

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近代五輪124年の歴史で初の延期が決まり、待つのは最難関の会場調整だ。決定は来夏まで。五輪33+パラ22競技の43会場を調べると、来春以降は予約前の会場が多い。ただ、表向きだ。延期後の新日程まで示せなかった理由について、森会長が「会場をつなぎ合わせて初めて決まる。空いてなきゃ、どうしようもない」と語気を強めたように至難の作業が待っている。

例えば日本武道館。担当者によると、予約は「来年3月まで」ビッシリ。その後は1年度ごとの更新のため「予約前」の状態だが、従前、夏場は大物歌手の公演やテレビのチャリティー番組が恒例行事だ。味スタなら大手事務所主催のライブ、幕張メッセなら音楽フェスティバル…。水面下では、その常連に五輪後「いの一番」で来年以降の予約を内定したケースも多い。

また、仮に今夏と同じ7月24日~8月9日の日程で問い合わせた場合でも、その期間だけ会場を押さえればいいわけではない。準備と原状回復で前後数カ月。「費用がどのくらいかかるか分からない」(武藤総長)中で解決を求められる。

それでも、来年が現実的だった。最も追加経費が少なくて済む年内は物理的に困難。武道館だけでなく、さいたまスーパーアリーナも、代々木競技場も、来年3月まで予定が埋まっていた。ねじ込むとなれば多額の補償を伴う調整が必要だった。テニスは9~10月に国内最大の男女ツアーが組み込まれており、協会の収入面を考えると死活問題。新型コロナウイルスの収束が見通せないことが大きかったが来年しかなかった。

一方、これら25会場は既存の施設。利用実績を見れば難航は分かっていた。反対に18の新設会場は融通が利きそうだ。国立競技場や東京アクアティクスセンターは原則、五輪が最優先。来年4月以降の予約受け付けも始めていない。どの時期でも対応可能、と意思を示した担当者が多かったのは救いだ。カレンダー上、来春以降に活路を見いだすしかなかったが、あとは組織委が政府、都との連携でパズルを組み合わせるしかない。14年1月24日の組織委の発足から6年2カ月、本来の開幕から4カ月。延期が前代未聞なら、あと1年間での再交渉も前人未到の挑戦になる。【木下淳】

 

■東京ビッグサイトの延長なら巨額補償料

○…世界中の報道陣を収容するメインプレスセンター、国際放送センターが置かれる東京ビッグサイト(江東区)は、今年12月7日開幕の日本国際工作機械見本市を皮切りに、21年も国際的なイベントが予定されている。首都屈指の大型展示場で国際会議、モーターショーなど幅広く使われている施設で、19年4月からの組織委員会による東棟の借り上げによる「展示場不足」は問題視されていた。延期に伴って再び借り受けるとなれば、巨額の補償料の発生とともに世論の批判を浴びる恐れがある。