女性蔑視発言で辞任した東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会の森喜朗前会長(83)の後任人事を巡り、選定が混迷を極めた新会長に18日、橋本聖子五輪相(56)が就任した。開幕まで半年を切り、開催への不安や新型コロナウイルス対策など課題は山積。夏冬7度の五輪出場を誇る申し子ながら、過去のセクハラ疑惑など悩みも逆風もある中で新たな大会の顔になった。五輪相は国務大臣規範(兼職禁止)により辞職した。

  ◇   ◇   ◇

東京五輪・パラリンピック組織委員会の新たな会長に橋本聖子五輪相を起用することになったのは、「官邸主導」の側面が大きかったようだ。菅義偉首相は森喜朗前会長の進退問題には直接関与しない構えだったが、新会長人事で失敗は許されない。首相自身が「女性」「若い人」と掲げた会長案は当初から橋本氏を想定したとされ、それがそのまま実現した形になった。

橋本氏が五輪相に就任したのは、安倍政権時代の2019年9月の内閣改造。参院選で5度目の当選をした直後の初入閣だった。当選5回での初入閣は決して早くないが、「五輪の申し子」として知られるだけに、本来なら約1年後に迫った東京大会に向けて「満を持しての起用だった」と、関係者は語る。当時官房長官だった首相はこの間、橋本氏に接し、厚い信頼を寄せてきた。

当初、橋本氏は会長就任打診を固辞。複数の関係者によると、責任の重さや大臣を途中で投げ出すことへの不安、昨年死去した父善吉さんの金銭問題、かつての自身のセクハラ問題なども背景にあったとされる。しかし政府が万全のサポート体制を敷くとして説得が続けられ、なかば「外堀を埋められる形」(政府関係者)での就任となった。

「新会長は火中の栗を拾う役割」(政府関係者)だからこそ、官邸が人事に介入しバックアップするのは、必然の流れでもあった。 意中の人物を新会長に据えることは、首相の政治的基盤にも関係する。橋本氏、五輪相に再登板する丸川珠代参院議員ともに自民党細田派に属する。細田派は森氏もかつて派閥トップを務めた自民党の清和政策研究会の流れをくみ、安倍晋三前首相も属した党内最大派閥。安倍氏のように政権基盤が盤石でない首相にとっては、最大派閥への配慮にもつながる。政界関係者は「小池都知事もかつて清和会に属したことがある。全員女性なのは喜ばしいが、まるでチーム清和会だ」と話した。 【中山知子】