東京五輪・パラリンピック組織委員会の森喜朗会長(83)の辞任を受け18日、橋本聖子新会長(56)が誕生した。候補者人選の裏側や、五輪開幕まで150日余りとなり予想される苦難の道のりなどを解説する。

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橋本氏に一本化した組織委の候補者検討委員会に関わった関係者によると、地元が国内候補地となっている2030年札幌冬季五輪の招致活動に有利に働くことも橋本氏が挙がった理由の1つだという。五輪相より組織委会長の方が国際オリンピック委員会(IOC)との関係も深く、さまざまなパイプができる。

検討委内では9人の候補者が挙がった。その中には安倍晋三前首相や日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長の名前も挙がったという。しかし、森氏の女性蔑視発言がきっかけとなり交代を余儀なくされた会長職。当初から女性でまだ50代という若手の橋本氏を推していた御手洗冨士夫座長が電話で、時間をかけて丁寧に説得した。

何よりも橋本氏は検討委メンバーのアスリートから強く推されたことに胸を打たれ、一時は固辞していた会長就任を受諾した。

川淵三郎氏(84)の会長人事が一転、白紙になったのが11日午前。真っ先に新会長候補として名前が挙がったのが橋本氏だった。だが14年にフィギュアスケート男子の高橋大輔にキスを強要した問題などで、再び世間の批判を浴びるケースなどを懸念し、当初は固辞の意向を示していた。

関係者によると、その理由は橋本氏本人よりも支援者の反対が大きかった。そんな中、JOC山下会長が会長候補に急浮上。IOC委員にもなり柔道五輪金メダリストとして知名度も高い。

15日から政界内に「橋本がだめなら山下しかいない」というムードが高まった。16日には官邸や組織委の武藤敏郎事務総長も「山下案」で行くという流れになったが、菅首相が「女性と若さ」にこだわり橋本氏が再浮上した。

都庁関係者によると小池百合子知事も山下案に懸念を示していたという。菅首相や自民党幹部ともその考えを共有していた。一方、小池氏が組織委の小谷実可子スポーツディレクターを推していたと一部で報道されたが、小池氏本人はそのような考えはなかったという。【三須一紀】