東京オリンピック(五輪)へ胸を高鳴らせているのはアスリートだけではない。水球の審判に日本人でただ1人指名された津崎明日美(31=ブルボンKZ)も開催を心待ちにしている。日本人女性が五輪で水球審判を務めるのは史上初。女子水球の五輪最終予選(1月=イタリア)でも笛を吹き、五輪の予行演習は完了した。

津崎の表情には多くの思いがにじみ出ていた。「試合をサポートする側として大会が成功するような仕事をしたい」。笑顔で話す顔に期待と緊張、重圧と使命感が入り交じっている。コロナ禍で開幕が1年延びた東京五輪は開催を前提にしながらもまだ開催は不透明。「実際、どうなるんだろうと思うこともあった」という不安を封印し、心構えだけは強く固めていた。

「見逃さない、ということ心掛ける。(悪質な)反則を1度見逃すと選手はフラストレーションをためてしまう」。そう話した津崎は女子水球の五輪最終予選をジャッジした。残り2枠の代表を決める重要な大会でオランダ対スロバキア、ハンガリー対カザフスタンなど4試合で笛を吹いた。「五輪には強い国しか出てこない。どの試合に割り当てられても楽しみ」と言う。

国際水泳連盟(FINA)に登録されている日本人の水球国際審判は7人。その中でただ1人、津崎がFINAから東京五輪の審判に指名された。日本人女性が水球の五輪審判を務めるのは史上初。「審判に決まったときはプレッシャーをすごく感じた」という重圧をプラスに変え、ジャッジの集中力にする。

18年から所属するブルボンKZでは女子U-15チームのコーチも務める。審判としての「目」を維持するため、欧州などのゲームの動画などをみて、イメージトレーニング。18日から地元柏崎市で開幕するU-17全日本ジュニア水球(潮風杯)でも審判を務める予定だ。「カンを鈍らせないように公式戦の場数を踏みたい」。東京五輪へ、準備は万全だった。【涌井幹雄】

◆津崎明日美(つざき・あすみ)1989年(平元)3月22日生まれ、熊本県出身。熊本学園大付-日体大卒。水球は西原中で開始。大学3年時に全国女子水球大会優勝。大卒後に横浜のスイミングスクールで水球のジュニアコーチ。指導のかたわら始めた審判は現1級審判。19年9月世界ジュニア(女子=ポルトガル)が審判の国際デビュー。158センチ、52キロ。血液型A。