東京五輪・パラリンピックの観客数上限を決める国際オリンピック委員会(IOC)国際パラリンピック委員会(IPC)と政府、東京都、大会組織委員会による5者協議が21日、都内を拠点に行われ「収容定員50%以内で1万人」に決定した。超過している会場では削減の再抽選が行われる一方、IOCやIF(国際競技団体)役員、スポンサーら大会関係者については「観客ではない」との考え方で「別枠」に。感染や医療の状況次第では無観客を検討する方針も示された。

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五輪開幕まで32日の土壇場で、ようやく観客数の上限が決まった。国のイベント開催制限を踏まえ「収容定員の50%で1万人」。政府分科会の尾身会長からの「現行より厳しい基準を」との提言と矛盾する指摘には、組織委の橋本会長が「8年前の国際社会との約束を果たす。状況によっては無観客も考える」と説明。言葉通り7月12日以降に緊急事態宣言、まん延防止等重点措置が発動されたり、感染と医療の状況が急変したりした場合には5者協議を開き、対応を検討する。

最大1万人となった一方、懸案の大会関係者は「外枠」の解釈とした。IOC、IF、主要クライアントに関して、組織委の武藤敏郎事務総長は「この方々は大会の運営関係者。観客ではない」と強調。実質の入場者は「一般チケット保有者+関係者」になった。

この方程式で「開会式に2万人」との検討については「決まっていないが、それより少ない数にはなる」と武藤氏。外枠は開閉会式に限らず全ての会場に適用されるが、同氏は「関係者なので一般の客席に座らないことが大前提」とした。1万人を超える会場が複数出るため「五輪だけ特別」と批判される可能性もあるが、橋本会長は「一般の方とは動線が違う。事前のコロナ対策や行動管理ができている」と理解を求めた。

組織委は関係者枠のさらなる削減も約束したが、国民が当選した枠は確実に減らされる。橋本会長は「心苦しいことだが、一般販売チケットの再抽選が必要になった」と正式発表。これまで五輪は448万枚が販売され、大会延期と今回の削減の再抽選で272万枚になる見通しだ。上限を超えている1割強のセッションが削減対象。8割を超える人は再抽選を免れる。計画とは大幅に異なり、見込んでいた900億円の入場料収入は「半分を下回る」(武藤氏)ことに。大会後には、その費用分担も新たな論点になる。【木下淳】

<5者協議後の共同声明および主な方針決定事項>

・学校連携観戦(開催地の小中学生対象)は性質に鑑みて別途の取り扱いに

・直行直帰の要請、都道府県をまたがる移動の際の注意点等を提示する観客対象のガイドラインを作成

・人流対策としてライブサイトやパブリックビューイングについては中止もしくは規模縮小を検討する

・パラリンピックは7月16日までに方針を決める

・公式リセール(転売)サービスは取りやめ。希望者には払い戻しを行う。追加販売もない。詳細は23日に組織委から発表される

・札幌マラソン会場の沿道対策についてはチケットホルダーの概念がなく、対応を自治体と細かく協議

◆観客上限をめぐる動き◆

▼20年3月 東京五輪・パラリンピックの1年程度の延期が決定。

▼同年11月 新型コロナウイルス対策調整会議で、観客上限は来春に最終決定することを確認。

▼21年3月 5者協議で海外観客の受け入れを断念。観客上限は4月に方向性を打ち出す方針を示した。

▼同年4月 政府がイベントの観客上限規制を6月末まで延長したことを受け、5者協議で観客上限は6月に決定と合意した。

▼同年5月 橋本氏が定例会見で緊急事態宣言の6月20日までの延長を受け、観客上限の判断も宣言明けとする考えを示した。

▼同年6月 IOCが東京五輪・パラリンピックの観客上限の決定時期を6月末と発表。