日本オリンピック委員会(JOC)山下泰裕会長(64)が28日、東京・丸の内の日本外国特派員協会で会見し、選手に向く批判の矛先を自身や東京オリンピック(五輪)・パラリンピック組織委員会に向けてほしい、と懇願した。

国際オリンピック委員会(IOC)が米ファイザー社などと「別枠」で用意した、五輪関係者への新型コロナウイルスワクチン接種について「日本選手団のワクチン接種率は95%。自分も含め既に1回目を打っているが、日本の選手たちは最初、世間からの批判があり前向きになれなかった。国民やマスコミからの批判の的になることを、みんな恐れている」と、まず説明した。

続けて、自身が日本のボイコットによって出場できなかった80年モスクワ五輪に触れ「多くの激励の手紙をいただいた中に1通、私の言動に批判的なものがあった。『アフガニスタンでは多くの人たちが尊い命を落としている。その中で、あなたは自分のことだけ好き勝手にやっている。わがまま言うのも、いいかげんにしろ』と。これを私は手を震わせながら、立ったまま読んだ」と紹介。語気を強めて、お願いをした。

「選手は国民からの声援を受けて力にしている。それは今回は『練習していいのか』『ワクチンを受けていいのか』『わがままじゃないのか』と。そう選手に思わせてしまっていることに、JOC会長として責任を感じている。選手を守る役割を果たしてこられなかった。彼らが受けるべき責めではない。JOCが受けるべき。一部の選手には私の時と同様、心ないメッセージが届いている。やめていただきたい。たたくのであればJOCと会長である私、そして組織委員会をたたいてほしい。モスクワや84年のロサンゼルス大会の傷が、いまだに癒えていない人たちがいる。選手たちに責任はない。そこは理解していただきたい」

大会については「非常に厳しい状況だが、安心安全に開催できるよう厳しくやっていく。コロナ対応や水際対策は組織委と国がマネジメントすることで、コンビニに行けるか等の細かい部分は把握していないが、JOCとしても連携していきたい」と述べた。