飛び込み界の超新星、玉井陸斗(13=JSS宝塚)が28日までに書面での取材に応じた。東京オリンピック(五輪)1年延期で、88年ぶりの夏季男子最年少出場記録更新は消滅したが、世界との差を埋めるチャンスと前向きに捉えた。

新型コロナウイルス感染拡大で、所属先のプールは使用できなくなった。「密」にならないように、馬淵崇英コーチ(56)と2人だけでトランポリンなど陸上での強化を行っている。【取材・構成=益田一弘】

玉井は延期を聞いた時を振り返って、13歳らしく素直な気持ちを明かした。

玉井 家でテレビのニュースを見て五輪延期と知った。その時の率直な気持ちは残念だと思いました。

無理もない。戦前から続く日本男子五輪最年少出場記録の更新がかかっていた。1932年ロサンゼルス大会競泳の北村久寿雄の14歳10カ月4日。しかし延期された21年7月23日開幕時点で8日届かなくなった。

玉井(最年少記録は)今年の自分しか塗りかえられることができない記録であったのでとても残念です。

延期決定後、馬淵コーチに「練習する時間が増えて成長できる時間が伸びたから五輪が延期でもむしろプラスだよ」と声をかけられた。気持ちを切り替えて、今はトランポリンを跳ぶ。

玉井 大会がない分、成長できる時間が増えた。むしろいい時期なのかなと。中1の時にたくさん学校を欠席した。家で腹筋をしたり勉強を頑張っています。

玉井は現在、五輪に王手をかけている段階。本来は、26日までの世界最終予選を兼ねたワールドカップ(W杯)東京大会(東京アクアティクスセンター)で五輪切符をつかむはずだった。だがW杯は延期。今はW杯の新日程決定を待って、再挑戦する形だ。

玉井 五輪での目標は日本人初のメダル獲得です。4月のW杯では代表権を獲得できる自信はありました。五輪が予定通り開催されていたら、どのような結果かはわかりませんが、世界のトップの選手との差を詰めることができるチャンスだったと思いました。自分の不安定な技を強化していきたい。自分も他競技の方たちと同じように成長できる時間だと思っています。

玉井の自己記録498・50点は昨夏世界選手権4位相当。課題である後ろ宙返りから入水する技術を磨いて、飛び込み界の悲願に近づくことを目指している。

◆玉井陸斗(たまい・りくと)2006年(平18)9月11日、兵庫県宝塚市生まれ。3歳の時にJSS宝塚で競泳、小1で飛び込みを始める。小5から寺内らと練習。昨年4月に日本室内選手権で、12歳7カ月の史上最年少優勝。同7月の世界選手権韓国大会は年齢制限のために出場できなかった。好きな食べ物は牛タン。149センチ、43キロ。