16年リオデジャネイロオリンピック(五輪)競泳男子400メートル個人メドレー金メダル萩野公介(25=ブリヂストン)が24日、オンライン形式で取材に応じた。新型コロナウイルス感染拡大後は初めて。東京五輪が1年延期になったことについて「それまでの成果を表現するところがなくなり、寂しいなと思った。ただまたチャンスをもらえたので準備期間が増えたことをプラスにとらえて、また頑張ろうと思っている」とした。

昨年は春先にモチベーションの低下から休養を挟んだ。復帰後は練習の成果がレースで発揮できない苦しみを味わった。「もし(予定通りに)東京五輪がきていたら、ちょっと厳しかったかなと思っています。100の準備をしていたが、100の自信はあったかなと。どうなっていたか、誰にも分からない」と話した。その上で「金メダルが難しいとかではなく、もっと下のレベル(の難しい)だったと思う。高いレベルでは準備できていなかった、と思う。今の方が上向いている」と率直に口にした。

4、5月は自宅でのトレーニングなどを行った。五輪延期後は、平井コーチからは「今だからできるトレーニングをしよう」と声をかけられた。通常は月1回程度のペースでレースをこなしていただけに「時間がなくて、切羽詰まってトレーニングしている感覚があった。今は試合がないので、ゆっくり泳ぎについて考えられる。ここ数年の課題にじっくり向き合ってやっている」。リオ五輪後はケガなどで1年間を通じて泳ぐことがなかっただけに、時間を有効活用する。

コロナ禍によって、あらためて五輪の意味を考える時間もあった。12年ロンドン大会、16年リオ大会と2度出場の萩野。「リオでは財政が良くないとか、選手村のバス停が完成してないとか、いろいろあった。また今では、僕らが泳いだプールが廃虚のようになっている。五輪とはどういうものか、考えている」と神妙な表情。その上で「一番大切なのは命。そして人によって、五輪が命の次だったり、20番目だったり、30番目だったりする。それはコロナの影響ではなく、五輪の価値、スポーツの価値は人それぞれによって違う。それは当たり前のことだと思います。僕は五輪を高くおいて、スポーツの力を信じている人間です。五輪を目指している人間の1人として、全力で泳ぐ姿を見せることで何かが変わったり、誰かが何かを感じてくれたり。そういう力を信じて頑張りたい」と口にした。【益田一弘】