56年ぶりの聖火が日本へ届いた。東京オリンピック(五輪)の聖火到着式が20日、宮城・航空自衛隊松島基地で行われた。

ギリシャから聖火を運んできたJALとANAの共同運航による特別輸送機「TOKYO2020」号(JL2020便)が同日の午前9時36分、着陸。強風のため、予定より約1時間半早く到着した。反対に式典は、東北新幹線の運転見合わせの影響で20分ほど遅れて始まった。

ともに五輪を3連覇した柔道男子の野村忠宏さんとレスリング女子の吉田沙保里さんが特別輸送機のタラップを上がり、大会組織委員会のスタッフからランタンを受け取った。本来はアテネで行われた引き継ぎ式に参加し、聖火リレーをへて運んでくるはずだった2人だが、新型コロナウイルス感染拡大の影響で渡航を断念。新たな役割を受けて地上に降り立ち、組織委の森喜朗会長へ手渡した。

続いて森会長があいさつし、新型コロナの影響で到着式の規模が縮小されたことを残念がった。地元の東松島市などの小学生ら約200人が招待される予定だったが、取りやめになったことに触れ「この神聖な聖火は東松島市、石巻市、女川町の皆さまに、特に子供たちに、盛大にお迎えいただくはずでございました。しかし、子供たちの安全を第一に考えて縮小することになりました。心待ちにしていた皆さまや、特にお子様たちの気持ちを考えますと、組織委としても苦渋の判断でした。どうかご理解ください。私も子供たちと一緒に(中止になった合唱)『花が咲く』を歌いたかった」と話した。

26日に福島・Jヴィレッジからグランドスタートする聖火リレーに向けた意気込みで締めくくり「全国を回り、56年ぶりに聖火が東京へ向かいます。希望の道を照らし出すことを望んでおります。開催に向けてIOC(国際オリンピック委員会)、国、東京都と緊密に連携し、またWHO(世界保健機関)の助言も受けて安心安全な大会に全力で取り組んで参ります」とあらためて決意を述べた。

吉田さんと野村さんもマイクを握り、吉田さんは「ギリシャから聖火が日本に無事到着したと思うと、うれしく思います。いよいよ始まります。こういう大変な時期ですけど、聖火リレーで皆さんに元気や希望を届けられれば。私たちも(渡航断念で)幻の聖火ランナーとなっていますので。走れればいいなあと思っています」と笑顔で“再登板”を求めた。

野村さんも「(アテネの)パナシナイコ競技場で行われた引き継ぎ式に行けなかった残念な思いはありますけど、こうして聖火の種火が入ったランタンを受け取ることができて、うれしく思います」とホッとした表情を見せた。そして聖火が再び野村さんと吉田さんの手に。トーチに移された聖火を午前11時41分、日本の地に立てられた聖火皿へ点火した。

式典にはアンバサダーのサンドウィッチマン、石原さとみ、パラリンピアンの田口亜希や日本オリンピック委員会(JOC)の山下泰裕会長らも出席。橋本五輪相、萩生田文科相、田中復興相、組織委の遠藤利明会長代行、武藤事務総長らも最後に間に合った。

この後、聖火は「復興の火」の最初の展示会場となる石巻市へ特別車両で向かった。