バレーボール女子日本代表は今月下旬からイタリア・リミニで行われるネーションズリーグに挑む。今月1日に世界ランキング1位の中国と東京・有明アリーナで行った国際親善試合では0-3と完敗。それでも、選手と指揮官はともに約1年半ぶりの実戦機会に手応えをつかんだ様子だった。今季の代表チームの活動を振り返りながら、ネーションズリーグに向けての展望を探る。

 

◆順当な顔ぶれ。新顔も

女子は3月1日に東京・味の素ナショナルトレーニングセンター(NTC)で国内合宿をスタートした。

今季Vリーグ362得点と日本人最多得点を挙げた古賀紗理那(24=NEC)、東レをリーグ無敗に導いた黒後愛(22)、最優秀選手賞を獲得したリベロの小幡真子(28=JT)ら、リーグを湧かせた選手たちが順当に名を連ねた。

また、小幡とともにVリーグと皇后杯2冠に輝いた長身セッター籾井あき(20=JT)を初招集。前主将の岩坂やサーブレシーブで高い信頼を得ていた新鍋が引退する中、新たな顔ぶれも加わって本大会に向けて着々と準備を進めた。

 

◆男性を練習相手に海外勢対策

合宿では海外の強豪国を想定して男性8人を練習パートナーに据え、高さ対策をした。約1年半年ぶりの国際親善試合で、やってきたことがどこまで通用するのか。相手に選んだのは16年リオデジャネイロ五輪金メダルの中国(世界ランキング1位)。自分たちの今の立ち位置を知る上で絶好の相手だった。

 

◆「万里の長城」の壁は高く、険しく

しかし、五輪2連覇を狙う「万里の長城」の壁は高く、険しかった。先発出場した6人(リベロを除く)の平均身長は日本179センチに対し、中国は191センチ。男子並みの選手たちとの戦いに苦戦を強いられた。

序盤から被ブロックが目立ち、さらにブロックをかいくぐっても中国の強固なディフェンスでスパイクが決まらない。2セットを簡単に奪われ、後がなくなった3セット目で意地を見せたが、29-31。完敗だった。

想定以上の高さとプレッシャーを前に、オポジットの長岡望悠(29=久光)は「中国はスピード感や手の出方が違った」。主将の荒木絵里香(36=トヨタ車体)も「ブロックが抜けても、ボールが落ちない。手が最後に伸びてきて、粘り強さを感じた」と脱帽していた。それでも、中田久美監督は「世界ランキング1位の中国を相手に自分たちの通用することが明確になった」と前を向く。

 

◆「日本のバレーは黒後、古賀に託す」

本大会でメンバー入りできるのははわずか12人。選考で重視する点について中田監督は「メダルを取るために必要なのは、自ら考えてチャレンジする選手が最低条件ではないか」と話していた。チームの得点源には副主将の古賀と黒後の名を挙げ「日本のバレーは拾ってつないで、最後は黒後、古賀に託す」と期待を寄せている。

 

◆注目の正セッターは誰に?

一方で日本伝統のコンビバレーの重要な鍵となるセッターは果たして誰が務めるのか? 指揮官も現役時代に務めたポジションだけに、関心が高い。

コロナ前の19年W杯では佐藤美弥(31=日立)が務める機会が多かったが、今回合宿に招集されたメンバーに佐藤の名はない。関菜々巳(21=東レ)、16年リオ五輪代表の田代佳奈美(30=デンソー)、JTの籾井が選ばれている。中田監督は3人の特徴について、こう述べている。

<田代について>「ディグ(スパイク、アタックを受けること)の安定性が武器。チームの中でも上級生の年代にはいるため、主将の荒木のサポートも担える」。

<関について>「走力のある努力家。東レで一緒にプレーしている石川や黒後の使い方が安定している」。

<籾井について>「サウスポーの大型セッター。トスの質が非常に打ちやすそう。ドリブルが少なくて、観ていて強気。トス回し1つにしても、深いところまで考えている」。

中国戦では初選出の籾井をスタメンに抜てきし、途中で田代を起用した。今月25日からの「ネーションズリーグ」では誰が攻撃のタクトを振るうのか。大会後の6月下旬と言われている五輪代表決定に向けて、代表生き残りを懸けたサバイバルがより一層激しくなりそうだ。【平山連】

 

 

女子日本代表のネーションズリーグの予選ラウンド対戦日程(世界ランキングは5月6日時点、日本は7位)

◆25日(日本時間22時)タイ(15位)

◆26日(同20時)中国(1位)

◆27日(同20時)韓国(10位)

◆31日(同22時)ブラジル(3位)

◆6月1日(同翌2日2時30分)イタリア(4位)

◆2日(同22時)ロシア(8位)

◆6日(同19時)オランダ(11位)

◆7日(同20時)カナダ(18位)

◆8日(同22時)ポーランド(13位)

◆12日(同20時)トルコ(5位)

◆13日(同19時)アメリカ(2位)

◆14日(同17時)ベルギー(14位)

◆18日(同19時)ドミニカ共和国(9位)

◆19日(同20時)ドイツ(12位)

◆20日(同22時)セルビア(6位)

予選ラウンド終了後の24日と25日、上位4チームによるファイナルラウンドを行う。