【吃音も強みに】千の苦しみは一つの喜びに変わる/西武・是沢から新1年生へ〈後編〉

ペナントレースが始まり、松井稼頭央新監督(47)率いる西武は堅実なスタートを切りました。全員野球を目指すチームに、この年明け、ちょっとした刺激が。昨秋の育成ドラフト4位で入団したルーキー、是沢涼輔捕手(22)です。「北極星のように」「火縄銃と呼ばれている」など独自の世界観で、ベテラン勢にも一目置かれる存在に。新社会人として〝入り〟に成功したルーキーに、その背景を尋ねました。

プロ野球

「支配下にはインパクト必要」

是沢は新入団選手会見で話題をかっさらった。北極星、火縄銃、上腕二頭筋。脳裏にこびりついて離れないフレーズが並んだ。

理由がある。川崎・武蔵小杉の法大野球部合宿所から毎日、町田の奥にある法大多摩キャンパスに電車通学していた。電車通学での日課があった。

「あいつ、今日もヒット打ったんだ、頑張ろう」

ネットを見ながら励みにしていた。ファームであっても、巨人入りした高崎健康福祉大高崎(群馬)時代の同級生、山下航汰選手(現三菱重工East)の活躍がうれしかった。

春季関東大会を制し、笑顔を見せる山下航汰(前列中央)ら高崎健康福祉大高崎ナイン=2018年5月23日

春季関東大会を制し、笑顔を見せる山下航汰(前列中央)ら高崎健康福祉大高崎ナイン=2018年5月23日

しかし球友は3年でプロ野球の世界を去ることになった。

「悲しかったですね。山下も最初、全然目立てなくて。しっかり声出してようやく見てもらえるようになった、と聞いていたので、自分も何かそれでアピールしなきゃダメだなと思っていました。育成指名が決まった時点で、支配下に入るにはインパクトが必要だなと思ってまして」

言葉のインパクト、そして表現のインパクト。どこか大人びた、それこそプラネタリウムのガイダンスのような静かで落ち着いた語り口に、松井監督や球団関係者、報道陣もくぎ付けになった。

言えなかった「背番号何番、是沢涼輔」

これにも背景がある。

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1980年11月、神奈川県座間市出身。法大卒、2003年入社。
震災後の2012年に「自転車日本一周」企画に挑戦し、結局は東日本一周でゴール。ごく局地的ながら経済効果をもたらした。
2019年にアマ野球担当記者として大船渡・佐々木朗希投手を総移動距離2.5万キロにわたり密着。ご縁あってか2020年から千葉ロッテ担当に。2023年から埼玉西武担当。
日本の全ての景色を目にするのが夢。22年9月時点で全国市区町村到達率97.2%、ならびに同2度以上到達率48.2%で、たまに「るるぶ金子」と呼ばれたりも。