【金子真仁・別海編】島影監督のセコマでおにぎり買ってようやく朝7時/連載〈13〉

旅が好きです。日本の全市区町村の97・3%を踏破済みです。その遍歴は球界関係者に興奮されたり、どん引きされたり。かけ算の世の中、野球×旅。お気楽に不定期で旅します。題して「野球と旅をこじつける」。第13回は本土最東端も近い、北海道別海町へ―。

高校野球

中標津空港 上空

厚い雲の下に出ても、眼下はそれなりに白かった。

時間と地形的にこれは釧路だと分かってしまう、このお金にならない能力を何かに生かしたい(あわよくばお金に変えたい)。1万フィート近い上空からでも、沼が凍結しているのがハッキリと分かる。

着陸が近づくたび、大地がますます白くなる。モノクロの世界。時折現れる牧場の赤い屋根がいい感じのアクセント。飛行機は中標津空港に着いた。「条件付き運航」だったものの到着地は無事に雪がやんでいた。

数日前まで沖縄・宮古島にいた。気温差ほぼ30度。それなりに体に来るが、この程度でダメージを感じていたらプチ旅人はやってられない。空気は澄み、知床の山々も美しい。

中標津空港はざっくりといえば、北海道の地図の右下のほうに位置する。知床半島、摩周湖、屈斜路湖、納沙布岬…などなど道東の有名な観光地は、この中標津を拠点にできる。

今回は遊びに来たわけではないから胸を張る。目的地は中標津の南、別海町だ。「べつかい」だと思っていたら、近隣出身の西武佐藤龍世内野手(27)から「べっかい、ね」と念押しされた。

いやいや「べつかい」でしょ…と思っていたら、どうやら数年前の町議会で「どっちでもいい」という結論になったらしい。こういう場合は、相手が「べっかい」と言えばこっちも「べっかい」と言えばいい。

40分ほど車を走らせ、別海高校に到着した。

恍惚の3時起床

ここが目的の場所。硬式野球部が秋の全道大会でベスト4に入り、24年春のセンバツ甲子園に21世紀枠で出場する可能性があった。

野球部の取材をさせていただいた。ビニールハウスを改造し、室内練習場にしている。北海道ではけっこう、こういうチームがある。

3人のマネジャーに話を聞いた。せっかくだから写真を撮ろう。「こっちに向けて、せーので雪をぶつける感じにして」なんてお願いして「せーの」と合図をしても、3人は下からそっと雪を投げるだけ。みんな優しいし、少し照れ屋。

セイコーマートの「ホットシェフ」で早々に夕食を食べ、床についた。翌朝は3時起床。

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1980年11月、神奈川県座間市出身。法大卒、2003年入社。
震災後の2012年に「自転車日本一周」企画に挑戦し、結局は東日本一周でゴール。ごく局地的ながら経済効果をもたらした。
2019年にアマ野球担当記者として大船渡・佐々木朗希投手を総移動距離2.5万キロにわたり密着。ご縁あってか2020年から千葉ロッテ担当に。2023年から埼玉西武担当。
日本の全ての景色を目にするのが夢。22年9月時点で全国市区町村到達率97.2%、ならびに同2度以上到達率48.2%で、たまに「るるぶ金子」と呼ばれたりも。