【所沢の主】是沢涼輔はいつもそこに 年末年始、おばあちゃんと置きティーする以外は

北極星と火縄銃ー。入団会見でキャッチーな言葉を選び、西武是沢涼輔捕手(23)はなかなか深い爪痕を残しました。高校でも大学でも公式戦ではほぼ出番がなく、それでも飛び込んだプロ野球。あれから1年。育成契約2年目に向かう春、何を思うか。1月の終わり、彼の〝居場所〟でもある室内練習場の片隅でひざを突き合わせました。

プロ野球

◆是沢涼輔(これさわ・りょうすけ)2000年(平12)4月19日生まれ、三重県出身。暁中時代は三重川越ヤングでプレー。高崎健康福祉大高崎では2年春の甲子園出場も、自身はメンバーに入れず。法大では4年春にリーグ戦デビュー。通算4試合で3打数0安打。法大では3番手捕手だったが、肩の強さ野球に対する姿勢がスカウトの目にとまった。22年育成ドラフト4位で西武入団。23年はイースタン・リーグ26試合に出場し、打率2割7厘、2本塁打、2打点。177センチ、78キロ。右投げ右打ち。今季推定年俸400万円。

防具入れに「愛斗」

自主トレに励む投手陣の球を受け終えた是沢が「すみません、遅くなりました」と笑顔で近寄ってくる。カシャカシャと防具の音を鳴らしながら。

室内練習場の外にいるファンたちから「是沢さん、サインお願いします」と声がかかる。その誠実な姿にファンが多い。是沢もファンを大事にする。

だから「先にどうぞ」と促した。是沢は迷って「いえ、今日は」と取材を優先してくれた。数日前からアポを取っていた。そういう義理堅いところがある。

防具入れには「愛斗」と大きく書いてある。

「去年、キャッチャー道具を入れる袋がなくて困っている時に愛斗さんが『使えよ』って。ありがたかったですね」

だから、その先輩がロッテに移籍した今でも使う。「愛斗さんの思い出です」と、やっぱり義理堅い。

高崎健康福祉大高崎(群馬)から法大を経て、22年育成ドラフト4位で入団した。高校でも大学でも、確固たるレギュラー捕手がおり、是沢はほとんど公式戦にさえ出ていない。鉄砲肩と真面目さが買われた。

「打診もなかったです」

最初のシーズンが過ぎていった。同期入団、同い年のドラフト1位蛭間らはすでに独身寮を出ている。是沢はまだ寮で暮らす。育成選手ということもあるが、それ以上に。

「おまえは練習するからいいだろ、って打診もなかったです」

寮も室内練習場も、2軍本拠地のカーミニークフィールドも、いずれも徒歩1分圏内。究極の職住接近は、練習大好きな是沢にとっては安住の地だ。

本文残り71% (2212文字/3098文字)

1980年11月、神奈川県座間市出身。法大卒、2003年入社。
震災後の2012年に「自転車日本一周」企画に挑戦し、結局は東日本一周でゴール。ごく局地的ながら経済効果をもたらした。
2019年にアマ野球担当記者として大船渡・佐々木朗希投手を総移動距離2.5万キロにわたり密着。ご縁あってか2020年から千葉ロッテ担当に。2023年から埼玉西武担当。
日本の全ての景色を目にするのが夢。22年9月時点で全国市区町村到達率97.2%、ならびに同2度以上到達率48.2%で、たまに「るるぶ金子」と呼ばれたりも。