【池袋西武~ベルーナドーム・中】慌ててる女性と目が合い「金子さん!」/連載〈8〉

唐突ながらやたらと歩きました。11月23日に東京・池袋の西武池袋本店から出発し、目的地は32キロ先、取材を担当する埼玉西武ライオンズの本拠地ベルーナドーム。SNS上で呼びかけた獅子党に直接お会いし「いまライオンズに何を思いますか?」と尋ねながらの西武線沿線さんぽ。出会えたのは大人だけで60人超。60人60色のライオンズ論。全3回の、今回は中盤戦をお届けします。

プロ野球

西東京市に入ったところで迎えてくれた西武ファン夫婦

西東京市に入ったところで迎えてくれた西武ファン夫婦

■「ぶれないですね」

池袋を出発し2時間半、西東京市に入った。けっこう歩いたのに旅路はまだ4割少々…という、割と一番苦しい時間帯。

明るい笑顔と明るい声の夫婦が、沿道で夫婦が手を振ってくれた。

奥さま何も変わらず、今いる人たちを応援するだけです。ぶれないですね。

ご主人秋山幸二さんの移籍の時代もファンです。あれが一番驚いて。

奥さま2人もそういうレベルに達してしまっているので。短い野球人生、いま頑張ってる人を応援したいです。弱くても好き。

そんなご夫婦に私の行動を応援してもらえたのがこの上なく光栄で、たぶん一瞬涙が出かけて、バレたかバレていないか。

何事もなかったように取り繕い、田無神社の近くまでやって来た。

「金子さーん」

車道から聞こえた。母子と思われる女性2人、面識はない。なんかすごいことになってきた。後日、メッセージをいただいた。

「30年ちょっとのライオンズファンです。栗山選手ファンも20年くらい。ここまでの選手になるとはという感じで。こんなに長く応援できる私は幸せです」

有名西武ファンの男性と金子

有名西武ファンの男性と金子

■黄色Tシャツ「ひら沼」

SNSを更新しながら4時間歩き、いよいよスマホの充電が危険水域に。コンビニでバッテリーの充電池を買う。何やら慌てている女性がいる。どうしたんだろう…と思ったら、見慣れたTシャツが見えて、視線はすっかりそっちに。

黄色いTシャツに「ひら沼」の文字。西武応援席でもひときわ目立つから、記者席からもいつも動きが見える。西武ファンの間でも「コンちゃん」としてかなり有名な片倉正純さん(45)。初対面ながら一気に吸い込まれる。

「どんな時もスタンドから支えるから、失敗恐れず思い切りプレーしてほしいですね。ライオンズは私にとって神のような存在。選手たちが息子のようにかわいいし、OB戦がもしオープン戦と重なるようなら、私はオープン戦に行きますよ。今のライオンズナインが大好きだから」

熱いコンちゃんに見送られると、さっきの慌てている女性が目の前からやって来た。目が合う。まさか。

「金子さん、ずっと探していました!」

えっ?

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1980年11月、神奈川県座間市出身。法大卒、2003年入社。
震災後の2012年に「自転車日本一周」企画に挑戦し、結局は東日本一周でゴール。ごく局地的ながら経済効果をもたらした。
2019年にアマ野球担当記者として大船渡・佐々木朗希投手を総移動距離2.5万キロにわたり密着。ご縁あってか2020年から千葉ロッテ担当に。2023年から埼玉西武担当。
日本の全ての景色を目にするのが夢。22年9月時点で全国市区町村到達率97.2%、ならびに同2度以上到達率48.2%で、たまに「るるぶ金子」と呼ばれたりも。