【舞台裏】巨人横川凱が放った契約更改でのひと言 大谷翔平からつながる信じる力

巨人横川凱投手(23)が、契約更改後の会見で「言葉悪いですけど…」を前置きしたひと言がありました。来季へ、同じ左腕の新加入選手が多く見込まれる中での気持ち。その返答の理由をたどると、ドジャース大谷翔平につながる源流に行き着きました。ベクトルを自分に向けること、誰もが不可能だと思うことを信じること。発言の背景に迫りました。(敬称略)

プロ野球



★「The Backstage」

ドラマは注目シーンだけが、見どころではありません。目立たないところにも、さまざまなストーリーが詰まっています。舞台裏で、記者が見て、聞いて、思った話をお届けします。



◆横川凱(よこがわ・かい)2000年(平12)8月30日、滋賀県生まれ。大阪桐蔭では中日根尾、ロッテ藤原らと同学年で2年春、3年春夏に甲子園で計4試合に登板。3年時は春夏連覇を達成した。18年ドラフト4位で巨人入団。2度目の育成契約から23年3月に支配下復帰。4月23日ヤクルト戦でプロ初勝利を挙げ、23年は自身最多の4勝をマークした。プロ通算62試合で9勝11敗、防御率3・13。190センチ、98キロ。左投げ左打ち。来季のテーマは「圧倒」。


静かなひと言に刮目

12月4日、契約更改を終えた横川は色紙に「圧倒」と書いた

12月4日、契約更改を終えた横川は色紙に「圧倒」と書いた


好青年の気負いで済ますには、あまりにも意志が込められた言葉だった。

「僕からしたら、どうでも良くて」

語尾に「!」をつけるほどには声量は大きくなかったが、芯を感じさせるには十分な語気を含んでいた。

12月4日に都内の球団事務所で行われた契約更改交渉を終え、横川は会見場の椅子に腰を下ろし、報道陣からの質問を受けていた。

金額の増減や、今季の振り返り、課題と収穫、来季の目標など、よどみない応答は、紳士然とした普段の振る舞いのイメージをそのままに、つつがなく進行していった。

ある質問の時だった。

「来季、同じ左腕の投手が多く加入してくる見込みです。その状況をどのように感じてますか」

少しうなずきながら問い掛けを聞き、口を開いた。

「そうですね。正直、左の先発ピッチャーをドラフトで指名したとか、先発の外国人選手を補強したとか…」

そこで一拍おいた。言葉にしていいのか一瞬の逡巡を感じさせる間だ。そして、続けた。

「言葉悪いですけど…、僕からしたらどうでも良くて」

よどみのない流れに棹をさす。すこし粗暴な言い回しに、温度を感じた。


言葉の裏にゆるぎない信念

10月12日、試合前にウオームアップする横川

10月12日、試合前にウオームアップする横川


オフを迎えて新戦力がニュースに踊る。

4月から野球部に移った記者には、初の季節に、少し考えさせられる日々を送っていた。

例えば、既存のチームに新たな人材が加入すれば、ポジション、スタイルが被る在籍中の選手にとってはライバルになる。

では、その当該者に「新たにくる○○選手は刺激になりますか」と聞くことは、定石の質問なのだろうか。

短命なプロ野球人生にあって、チームの保有人数は限られる。誰かが入れば、誰かは切られる。誰もが現役手形を手にすることはなく、白球に毎日を刻んでいく。

生きるか死ぬか。

大げさにも聞こえるが、みなが個人事業主であるプロ野球チームであるからこそ、「ライバル」は明確に「敵」でもあるだろう。

だからこそ、「刺激」という言葉で、部活動的な交流と切磋琢磨(せっさたくま)をイメージすることに違和感があった。

もちろん、ライバル関係が結ぶ交友には、価値がある。そこを掘り進めることも、プロの世界の魅力かもしれない。

ただ、自分の人生を左右しかねない新たな加入者の事を聞かれ、優等生に「一緒に頑張りたい」と答える必要はないのではないか。それがオフ取材を重ねる毎日で募った記者としての結論だった。

だからこそ、この時の横川の答えが一層響いた。

「どうでも良い」

その後に続いた説明がなお、興味を引いた。


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2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて17年。25年4月に初の異動で野球部へ配属となりました。競技経験はありませんが、現在は息子が通う少年野球チームで“球拾い”コーチとして奮闘中。記者としても、様々な話題を拾います。ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。クラフトビール好きです。