フィギュア2023.03.09 11:00

松本航

エキシビションを前に友野（中央）と言葉を交わす須本。左は本田太一さん

2人の友にリンクサイドから見守られ

振り返って見えた光景が、何よりもうれしかった。

2月12日、須本は誰もいないリンクに立った。1人だけのウオーミングアップ。メインスタンド方向に視線を送ると、手前には頭上で拍手をする友野一希、大阪を拠点に切磋琢磨（せっさたくま）した本田太一さんがいた。上の客席を見ると、数え切れないファンが、自らの名前が記されたバナータオルを振っていた。

「全大阪は本当にローカルな大会。こんなに来ていただけるとは思っていなかったです」

感無量だった。ゆっくりと滑り始めると、下半身、上半身の順に体をほぐした。3回転ルッツを決めると、友野が「フォ～！」とさけんでいた。2連続の3回転トーループを跳び終え、エキシビションに臨んだ。

元々はジュニア時代を象徴する演目「雨に唄えば」を、傘を使いながら演じる予定だった。だが、現役生活の締めくくりに、新しい挑戦をしたくなった。

演じたのは「海の上のピアニスト」だった。

エキシビションでの演技を終え、友野（左）と言葉を交わす須本

1月のインカレで競技会への区切りをつけていたが、以降はアイスショーで演技する機会が増えていた。

「2日前に3時間で振り付けました。最後は新しい、違う曲をやりたいと思っていたのもあります。自分にとってもやりやすい曲。『曲で泣いてもらいたいな』という思いもあります」

本文残り72％　（1855文字／2561文字）