浅田真央を見て日本でフィギュアの道 モンゴル初の選手となった「真鶴」26歳の夢

今年1月、モンゴル初のアイスショー「Grassland on ice」が首都ウランバートルで開催されました。主演を務めたのは、モンゴル初のフィギュアスケート選手として国際大会に出場したガンスフ・マラル・エレデンさん(26)。5歳で移住した日本でフィギュアに出合い、近年は「浅田真央サンクスツアー」のキャストも務めました。参加に至った経緯、そのキャリア、そして今描く夢までをお聞きしました。

フィギュア

笑顔でインタビューに答えるガンスフ・マラル・エレデンさん

笑顔でインタビューに答えるガンスフ・マラル・エレデンさん

1月モンゴル初のショーで主演、マラルさん

ここは、モンゴル・ウランバートルのリンク「ステップアリーナ」。

時は、2023年1月24日。

マラルさんは、大きな鳥の羽を模した衣装を前に、驚いていた。

「やっと来た!主役が来た!」

関係者が色めき立っている。寝耳に水だった。主役…。ショーの詳細な演出を知る事なく、本番会場に入ると、もうすでに大枠は決まっていた。

「モンゴルと日本の友好を示す内容で、私は『真鶴』をイメージして滑ることになってたんです」。

真鶴は、モンゴルと日本に生息している渡り鳥で、冬は鹿児島に渡る。その姿に、両国の絆を重ねる。そこまでのコンセプトはしっかりしていたのだが…。

「振り付けをする人が誰もいないとなってて。『お願いします』とそこからでした。音楽を知ったのもその時だったんですが」

苦笑しながら振り返る。国として初めて行うアイスショー。現地の関係者には詳細な演出の中身まで描ける人材がいなかったのだろう。

地元で演劇をやっている子どもたちや、スピードスケート、ショートトラックの選手たち、バレエダンサーなども出演することなどは決まっていたが、詳細な演出は一任されていた。

「びっくりしました(笑い)。競技者だったら無理だったと思います。でも、私にはサンクスツアーの経験がありました。振り付けの引き出しのようなものがあって、『あの振りはこれにいかせるな』ってすぐにつながっていたんです」

2018年からキャストとして200公演以上、全国を回った日々が助けてくれた。

思い返したのは、座長だった浅田のこだわりだった。より良いものにしていくために、毎公演前に必ず細かな変化を求めた。

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スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。