【鍵山正和 ~哲~〈4〉】優真に委ねた今季初戦 一変した6練に父は何を感じたか

フィギュアスケート男子で、北京オリンピックで日本史上最年少メダル(個人銀、団体銅)を獲得した鍵山優真(20=オリエンタルバイオ/中京大)。その指導に就く父、鍵山正和コーチ(51)の哲学に迫る連載「鍵山正和 ~哲~」の第4回は、左足首のケガを乗り越えて迎えた今季の初戦、木下トロフィー争奪大会(8月11、12日)にフォーカスします。ショートプログラム、フリー、2つの6分間練習を見届け、感じたこと-。(敬称略)

フィギュア

8月11日、木下トロフィー争奪大会SPの演技

8月11日、木下トロフィー争奪大会SPの演技

8月12日、木下トロフィー争奪大会フリーの演技

8月12日、木下トロフィー争奪大会フリーの演技

8カ月ぶり試合、木下トロフィー

これまでと同じように、見守った。

ただ、これまで以上に、見つめ、待つ。その事を心掛けた。

「ショートは4回転サルコーを1回やって失敗したんですよね。普段だったら、その失敗したジャンプを、またちょっと時間をかけて跳べたりするんですけど、もう全く跳べなかったんですよね」

8月11日、京都・木下アカデミー京都アイスアリーナは午後2時40分を過ぎた頃だった。男子SP、出場6人の6分間練習が始まって数分が過ぎていた。

優真が氷慣らしにリンクを2周し、ジャンプを跳んでいく。徐々に回転数を増やしていき、大技へと向かう。残り時間に余裕を持って4回転ジャンプに入れるか。観客はいない、選手や指導者のみが見つめる静かな空間に氷を削る音が響き、時が過ぎていく。

2022年の年末以来、8カ月ぶりの試合、今季初戦。

正和は心の内で予見していた。

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スポーツ

阿部健吾Kengo Abe

2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて15年目。異動ゼロは社内でも珍種です。
どっこい、多様な競技を取材してきた強みを生かし、選手のすごみを横断的に、“特種”な記事を書きたいと奮闘してます。
ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。