【長岡柚奈〈下〉】“ゆなすみ”の試練「この練習を続けても先はない」教訓は未来へ

日刊スポーツ・プレミアムでは毎週月曜に「氷現者」と題し、フィギュアスケートに関わる人物のルーツや思いに迫っています。

シリーズ第46弾ではペア転向2季目で世界選手権を経験した長岡柚奈(19=木下アカデミー)が登場しています。

3回連載の下編は森口澄士(23)とペア結成後の歩み。26年ミラノ・コルティナ五輪シーズンとなる来季以降も大切にしたい思いに迫ります。(敬称略)

フィギュア

◆長岡柚奈(ながおか・ゆな)2005年(平17)7月13日、北海道・洞爺湖町生まれ。物心ついた頃から札幌市で育つ。5歳でスケートに出合い、7歳から本格的に競技と向き合う。シングルでは北海道・藤女子高2年時の2022年全日本ジュニア選手権23位。翌23年5月に森口澄士とのペア“ゆなすみ”結成を発表し、拠点を京都に移す。同年NHK杯でグランプリ(GP)シリーズデビュー。24年全日本選手権2位、25年冬季アジア大会銅メダル。初出場の4大陸選手権は7位、世界選手権は22位。趣味はショッピング。身長156センチ。

「君の笑顔が本当に気に入った。この笑顔が好きだ」

ペアのトライアルでブルーノ・マルコット・コーチ(右)と笑顔を見せる長岡柚奈(本人提供)

ペアのトライアルでブルーノ・マルコット・コーチ(右)と笑顔を見せる長岡柚奈(本人提供)

トライアルと聞いていた場に、現れたのは森口だった。

2023年4月上旬、大阪・関空アイスアリーナ。

ペア競技への挑戦を志す面々が第1歩を踏み出し、一夜明けた2日目だった。

「1日目は経験者が誰もいなくて『今回はいろいろなことを知るまでなんだろうな』と思っていました。そうしたら2日目から澄くんが来たので、実際に『上げられるよ』となったんです」

女子選手がいくつかのチームに分かれ、森口を含めた男子が順番に回ってきた。

リフトは最初、肩まで上げる形を試した。

長岡も森口の支えを受けた。

「肩まで上がっただけで、私は『おぉ~。すごい!』という感じでした」

その様子を世界王者の三浦璃来、木原龍一組を指導するコーチ、ブルーノ・マルコットが見ていた。肩まで上げるエクササイズを行ったのちに、声がかかった。

「上までいってみよう!」

体がスッと森口の頭上へと持ち上げられた。

同じ高さの視線には誰もいない。

別世界を見ているようだった。

「率直に『すごい楽しい!』って思いました」

木下トロフィー争奪フィギュアスケート大会2023 演技を披露する長岡、森口(右)組(2023年8月12日撮影)

木下トロフィー争奪フィギュアスケート大会2023 演技を披露する長岡、森口(右)組(2023年8月12日撮影)

スロージャンプは1日目から男子選手と組み、1回転で試していた。動画で事前に勉強していたため「こんな感じでやるんじゃない?」と自らが引っ張った。

マルコットには、その時点で声をかけられていた。

「すごいね、君たち。トライアウトやったことあるよね? 初めて? うそだろう! 才能あるよ」

ペアへのあくなき姿勢が、マルコットに自身の存在を強く印象づけていたのかもしれない。

森口はそのシーズン、前パートナーとともにジュニアグランプリ(GP)ファイナル、世界ジュニア選手権で4位と躍進していた。

マルコットの「跳んでみて」の声で、サイドバイサイドジャンプに向かった。

「人の隣で跳んだことないよ…」

そう思いながらも2人そろって3回転ルッツを着氷させると、名伯楽が「できた!」と拍手していた。

“ゆなすみ”誕生への芽が出た。

本文残り80% (5206文字/6510文字)

大学までラグビー部に所属。2013年10月に日刊スポーツ大阪本社へ入社。
プロ野球の阪神を2シーズン担当し、2015年11月から西日本の五輪競技やラグビーを担当。
2018年平昌冬季五輪(フィギュアスケートとショートトラック)、19年ラグビーW杯日本大会、21年東京五輪(マラソンなど札幌開催競技)を取材。
21年11月に東京本社へ異動し、フィギュアスケート、ラグビー、卓球、水泳などを担当。22年北京冬季五輪(フィギュアスケートやショートトラック)、23年ラグビーW杯フランス大会を取材。
身長は185センチ、体重は大学時代に届かなかった〝100キロの壁〟を突破。体形は激変したが、体脂肪率は計らないスタンス。