【箱根駅伝2023 あえぐ名門〈2〉】奪われた推薦組と一般組のせめぎ合い
早稲田大学競走部。東京箱根間往復大学駅伝(箱根駅伝)で13回の総合優勝を誇る伝統校は、今年1月の大会でシード落ち(総合13位)を喫した。2010年度の「大学駅伝3冠」を最後に栄光から遠のく苦境に、6月、OBの名ランナー花田勝彦(51)を監督に迎えた。箱根駅伝は24年の第100年回大会で全国化を導入するなど、日本スポーツ界でも屈指のメガイベント路線を突き進んでいる。その流れに「ワセダの伝統」が直面しているものとは-。来年1月の23年大会までの長期密着取材、第2回はコロナが奪ったものを探る。(敬称略)
陸上
「今日も1番」鈴木主将は待っている
午前5時30分、新潟県妙高市、池迺屋旅館の客室のカーテンが開けられる。
「よし、今日も1番だな」
主将の鈴木創士(4年=浜松日体)は心の中で思う。閉まっていれば、同部屋の選手はまだ外に出てはいない。誰よりも早く宿を出て、標高約800メートルの山道へと走りだしていく。
「今回はコツコツ距離を稼ごう」
そう決めて、8月16日から9日間の合宿に入った。練習メニュー以外こそが肝心。
毎日、起床一番乗りを続けながら、仲間、後輩たちが、自分よりも早く起きて走りに行く姿も心待ちにしていた。
いつか、起きたらすでにカーテンが開いている。そんな光景が、鈴木にとってはチームの復活を示す1つの兆しになると思っていた。
早大駅伝部は沈みきっていた。1月の箱根路でシード落ちの屈辱。46回連続出場を続け、連綿とつながれてきた「ワセダの伝統」が分断された。主将就任が決まっていた鈴木は、深い衝撃を受けていた。
少しずつ、だが確実に。それまでの2年間で「ワセダらしさ」はむしばまれていた。
新型コロナウイルス。全選手、全大学に等しく苦難を強いた感染症はただ、早稲田にはより一層響いていたとも言える。
コロナで寮閉鎖、チームはバラバラに
「ワセダの伝統」。歴代、所属選手が30人あまりと少数制を敷いてきた伝統校にあって、必須なのは選手同士のせめぎ合い、刺激し合いだった。それが例えば、高校時代の成績優秀な「推薦組」と、一般入試や指定校推薦など陸上の成績ではない形で入学してくる「一般組」 の区分。
能力的に劣る自覚がある後者が、仲間が見ていた所での努力で走り込みを続ければ、その追い上げの兆しに恐怖すら覚え、前者が必死になる。
単純構図だが、早稲田が優勝争いを繰り広げる時には、常に「一般組」の躍進がつきものだった。
ただ、それは「共同生活」をしていればこその化学反応だった。
コロナにより大学、競走部も厳格な対策を取った。
チームは解散。感染が広まった20年には大半が暮らしていた寮は閉鎖になり、各自は故郷、出身高校などに戻らざるを得なかった。
共に走る。そんな当たり前の日常が奪われた。そして、日常が育んでいたものは、瓦解(がかい)した。
鈴木は言う。
「さまざまな機会が奪われた」
例えば、走る前の準備にそれはある。名門高校では当たり前のように行われるアップ、ストレッチ方法も、一般組にとっては成長の糧。「知らぬ」を目の前で「知れる」環境こそ、急速な成長を支えた。
1人、郷里にいては、糧は落ちてはいない。
6月に監督に就任した花田勝彦は、その切磋の中で磨かれる「強い個」こそ早稲田の神髄だとする。
「それぞれの頑張り方があればいい。競技以外に目指すものがありながら、周りから『あいつ、授業もしっかりでてるのに、すごいな』と思われるような学生がいる。人間としての成長、その部分で作用し合う。そういう選手が10人集まった時、早稲田は力を発揮してきたと思います」
走ることに限らない「強さ」。それは個の魅力と言い換えていいかもしれない。
花田が学生時代、4年間長距離に打ち込み、卒業後には医学部に入り直すと公言し、実際にいま医者として人生を送る先輩もいたという。
多士済々。
「箱根から世界へ」を掲げ、瀬古利彦、花田、渡辺康幸、竹沢健介、大迫傑ら五輪ランナーも輩出してきた素地は、刺激の豊かさにあったのかもしれない。
2008年入社後にスポーツ部(野球以外を担当します)に配属されて17年。25年4月に初の異動で野球部へ配属となりました。競技経験はありませんが、現在は息子が通う少年野球チームで“球拾い”コーチとして奮闘中。記者としても、様々な話題を拾います。ツイッターは@KengoAbe_nikkan。二児の父です。クラフトビール好きです。
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