【箱根駅伝story】田澤、山下、其田「駒澤から世界へ」体現者の背を追って

22年シーズンの三大駅伝で史上5校目の3冠を達成した駒澤大(駒大)には、受け継がれてきた標語があります。「駒澤から世界へ」。3月で勇退した大八木弘明監督(現総監督)が、ことあるごとに口にする言葉でもあります。 

3月5日の東京マラソンで日本歴代3位の好記録を樹立した山下一貴(25=三菱重工)をはじめ、この春は駒大勢の躍進が際立ちました。なぜ活躍できるのか。なぜ高みを目指すことができるのか。駒大で育ったランナーたちの言葉から、強さの要因に迫りました。 

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3月14日に行われた大学駅伝3冠達成報告会に出席した駒大のメンバー

3月14日に行われた大学駅伝3冠達成報告会に出席した駒大のメンバー

3月の3冠報告会で連呼された言葉

「世界」-。約60分に及んだ会の中で、その言葉が響いたのは7回だった。

2023年3月14日。多摩川沿いのショッピングモール「二子玉川ライズ」。

二子玉川駅からほど近くの屋外スペースで、駒大のメンバーが3冠達成報告会を開いていた。

藤田敦史新監督をはじめ、チームをけん引した山野力主将(22=現九電工)や新主将の鈴木芽吹(新4年)らがステージ上でマイクを握った。

そこで「世界」という言葉を繰り返したのが、大八木弘明監督(現総監督)と田澤廉(22=現トヨタ自動車)の2人だった。

4回も世界と口にした大八木監督は、こともなげに言った。

「私たちは『駒澤から世界へ』というのがチームの目標ですから」

3回だった田澤も、淡々とした口調で覚悟をにじませた。

「これからも五輪や世界の舞台で結果を残すことを目標にしてやっていこうと思います」

マイク越しに会場へ響く声に、藤色のウェアを着たチームメートはじっと耳を傾けていた。

「駒澤から世界へ」。今年の初春、駒大勢はその標語の深さを、自らの姿で示した。

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岐阜県不破郡垂井町出身。2022年4月入社。同年夏の高校野球取材では西東京を担当。同年10月からスポーツ部(野球以外の担当)所属。
中学時代は軟式野球部で“ショート”を守ったが、高校では演劇部という異色の経歴。大学時代に結成したカーリングチームでは“セカンド”を務めるも、ドローショットに難がある。