【鬼の井村と女王乾〈上〉】「タコみたい」泳ぎに異変 新ルールでの偉業、その舞台裏

7月の水泳世界選手権福岡大会。

アーティスティックスイミング(AS)で、金字塔が生まれた。

ソロ乾友紀子(32)が、2大会連続2冠を達成。

しかも大幅なルール変更を挟んでの、偉業だった。

かつても、そして新時代でも、絶対的な女王であることを証明した。

その裏側には、東京五輪後、井村雅代コーチ(73)と1対1で歩んだ濃密な日々があった。

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「水泳の日2023大阪」で柔和な笑顔を見せた乾友紀子(左)と井村雅代コーチ

「水泳の日2023大阪」で柔和な笑顔を見せた乾友紀子(左)と井村雅代コーチ

世界水泳AS連続2冠、凱旋で見せた解放の演技

8月11日、大阪市西区にあるAsue大阪プール。

マイクを握った井村コーチが乾を紹介して、スタンドから大歓声が沸いた。

大阪市が行った「水泳の日2023大阪」。

乾が金メダルの演技、フリールーティン(FR)「八岐大蛇(やまたのおろち)」を華麗に舞った。

師弟に、柔和な表情が浮かんだ。

 お気に入りの振り付けを世界選手権から増やして泳いだ。やりたいことがいっぱい詰まった演技。よかった。

井村 100%リラックスしてた。試合ではレベルを獲得するために、難易度を獲得するために、すごいプレッシャーで泳いでいた。彼女が泳ぎたい、演じたい内容をやっているので、楽しんでいる。それを見ていて、私もうれしい。

東京五輪の失意。

22年世界選手権ブダペスト大会でのソロ2冠。

そして福岡。

苦難の道を歩んだ2人は、さまざまな制約から解放されて、笑顔が広がった。

乾は、自国開催の福岡を節目ととらえていた。

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スポーツ

益田一弘Kazuhiro Masuda

Hiroshima

広島市生まれ。2000年の入社からバトル、相撲、サッカー、野球を担当して、13年からオリンピック担当。
14年ソチ、16年リオデジャネイロを取材して、18年平昌、21年東京は五輪班キャップを務める。東京五輪後に一般スポーツデスク。
大学時代はボクシング部で全日本選手権出場も初戦敗退。アマチュア戦績は21勝(17KO)8敗。