低迷が続く競輪界に明るいニュースが飛び込んできた。岡山県玉野市の玉野競輪場のスタンド改修による建て替え事業で、競輪場としては全国で初めてホテルが併設されることが決まった。同競輪場は穏やかな瀬戸内海に面しており、風光明媚(めいび)な抜群のロケーションにある。

数年前からホテル併設の案はあったという。というのも同競輪場に近接する宇野港は、瀬戸内海の島々を舞台に行われる瀬戸内国際芸術祭の会場への発着港になっている。世界的にも注目されるイベントだが、訪日客が押しかけても周辺には集客数が100人を超えるホテルがなく、玉野市は通過点でしかなかった。

その窮地を救ったのが、同競輪場で14年1月にスタートしたミッドナイト競輪だ。110億円前後だった年間売り上げが15年度141億円、同16年度197億円、同17年度157億円、同18年度177億円と上昇。財政は大きな黒字に転じ、スタンド建て替えに要する費用も20億円を上限に市の認可が降りた。ホテル併設の費用は、包括委託業者となった「チャリ・ロト」が全て負担する。

ホテルの規模は8階建て100室前後で、22年4月のオープンが予定されている。玉野市産業振興部競輪事業課の藤原洋一課長補佐は「全国から問い合わせが殺到しています」と反響の大きさに驚いた。瀬戸内海の文化に触れながら、客室からは競輪がナマで観戦できる。玉野市の英断が、競輪界に新風を巻き起こすことは間違いない。