平成最後のグランプリは峰竜太(33=佐賀)がイン死守から押し切り、涙の初制覇を果たした。2着は2M逆転の毒島誠。接戦の3着争いは白井英治が競り勝った。また、グランプリシリーズは平尾崇典(46=岡山)がインから逃げて、2度目のSG制覇を飾った。

やっぱり泣いた。しかし、これまでの涙とは違った。SGでの悔し泣き、うれし泣き。それとは違う、レーサー人生で初めて安堵(あんど)の涙がこぼれた。「今回はホッとしたのもあった」。それほどまで、緊張感に襲われた。ウイニングランを終え、弟子の山田康二、上野真之介と抱き合い号泣。おえつをもらし、感情を爆発させた。「自分の力だけじゃないと思うと涙があふれる」。平成最後のグランプリ。勝ったのは、涙もろい、昭和を思わせるヒーローだった。

レースは進入から熾烈(しれつ)を極めた。菊地孝平の前付けで、起こし位置は90メートル付近。想定よりはるかに深かった。動揺の中、コンマ12で踏み込んだが、4コースから菊地が絞ってきた。「あっという間に1Mが来て、あっという間に回ってた」。追い風4メートルを気にせず、全速で回った。無我夢中でも高等技術は体に染みこんでいた。先マイに成功し、一瞬で後続を引き離した。ゴールの瞬間は右手を力強く掲げた。

家族の支えも力になった。「まくられるかもしれない」、「失敗するかもしれない」。レース前はネガティブなイメージが頭から離れなかった。その時、住之江へ向かう前、妻の明華子(あかね=30)さんから掛けられた言葉を思い出した。「笑顔が幸運を運ぶ」。ペラ小屋で1人、無理にでも笑った。レース後、愛妻からは「おめでとう。またひとつ夢がかなったね」と暖かい言葉を掛けられ、また涙腺が緩んだ。

グランプリ初制覇で年間賞金は2億円超え。レーサーとして高みに上った。しかし、まだゴールではない。「峰竜太がボート界でNO・1だと、自分が思えるぐらいになりたい。全てのタイトルに全力投球します」。ファンは来年も、峰のうれし涙を楽しみに待つ。【東和弘】