【大上悟・オレに任せろ】

 最後は肉体を超越した気迫が稲垣裕之をG1初制覇へと押し上げる。準決で魂を継承した。打鐘で前団をたたき切って先制。いつも通りに、すべてを任せた村上義弘が番手で体を張ってガード。「後ろを振り返る余裕もなかったが、村上さんがいる」。何の不安もなかった。絶好の3番手の新田祐大が4角から外を踏み、番手の神山雄一郎が京都勢の中を突っ込んだ。

 ゴール直後に村上の仕事ぶりを確信した。いつも通り体を張ってくれたことを。迷わずに踏み込めば権利の3着どころか、1着もあった。だが、神山の巨体に小さな体をぶつけ、捨て身でラインの競走に徹した。稲垣は「オリオン賞で脇本(雄太)の番手で同じことができなかった。ラインで戦う意味。村上さんの思いも背負っていく」と言う。

 手足口病に感染した7月の福井G3からサマーナイトフェスティバル、小田原G3は低迷を余儀なくされた。ウイルス感染で夜も眠れない発熱から体力を根こそぎ喪失した。我慢と忍耐で乗り切って、決勝の大舞台に立つ。

 決勝は3連勝でG1初決勝の竹内雄作に切れ味鋭い大塚健一郎がマークする。竹内が逃げれば、準決で波乱を演じた桐山敬太郎が総力戦で後位ゲットとみた。最大の敵はスーパーダッシュの新田だが、稲垣なら新田より前の位置を取り切れる。先まくりを放てば、番手の稲川翔が新田をけん制してくれる。新田が態勢を立て直し、大外をフル加速してきてもゴール前勝負を制す。3連単は(3)=(7)から総流し。