【帰ってきた山口国男ガイダンスコーナー】(3)

<狂わされるリズム>

 前回に続いて低迷する売り上げの話ですが、「審議」も原因の1つではないかと思います。相変わらず落車などの事故が頻繁に起こっているし、最近は競走ルールが複雑ですね。毎日審議ばかりで、これがいつも長い!

 ファンの多くは、確定してから次のレースの車券を買うものです。審議が行われるほど車券の検討・購入に充てる時間が短くなる。その分だけ、必ず売り上げに影響します。

 しかも、人間にとって「リズム」というものは大切です。待たされると、それが狂ってしまう。審議の間、早く車券を買いたい人はイライラしたり、気が気でない。こんなことばかりでは購買意欲をなくしてしまいますよ。

 ファンにとっても選手にとっても、今の競走ルールは分かりにくい。審判にとっても同じこと。だから審議が長引く。もっとファンの立場を考えて、いろいろ改善してほしい。

<ミッドナイト競輪に学ぶ>

 そういえばミッドナイト競輪、売れていますね。なぜか? 手付かずだった深夜の時間帯で新たなファンを掘り起こした。そんなことがよく言われていますが、私が考えるには、ファンがリズムを狂わされることなく車券を買えるから。

 ミッドナイト競輪は20分ちょっとの間隔で、次々とレースが行われます。見ていると7車立てのせいか、あまり展開がもつれず、落車や審議がほとんどありません。同じ7車立てのガールズケイリンも、ルールが単純で厳しいから事故が少ない。ファンはテンポ良く、どんどん車券を買える。買いやすいんじゃないですかね。

 ファンのリズム、テンポを第一に考えた競輪であってほしいと、願っています。

 ◆山口国男(やまぐち・くにお)1950年(昭25)8月11日生まれ。東京都荒川区出身。日本競輪学校24期生、松戸をホームバンクとする東京登録選手として67年にデビュー。特別競輪(現G1)優勝こそ果たせなかったが、72年・高松宮杯と73年・競輪祭で決勝3着に入るなど、トップレーサーとして一時代を築いた。フラワーラインの司令塔としても活躍。01年の引退後、松戸競輪場で競輪ガイダンスコーナーの講師を務め、15年オールスターを最後に定年退職。