【ヤマコウの時は来た!】

 初日7Rで連係する吉田敏洋と山内卓也ら地元勢にとって試練の6日間が始まった。敏洋にとって11、14年の名古屋ダービーは不本意だった。11年は2、7、4、3着で2予敗退。14年は4、1、1、1着で1予敗退も3連勝で締めくくった。

 11年のころは、私も現役だったので、控室での様子はよく覚えている。強気なことは言っても、どこか不安な様子が見え隠れしていた。その証拠に、敏洋は不安になると差し歯を触る癖がある。レース前、よくそこを触っていた。と、盟友の山内卓也がこっそり教えてくれた(笑い)。それ以来、敏洋の気合(不安?)のバロメーターは差し歯となった。

 そんな敏洋も、失敗を重ねて何が自分に足りないかをよく考えたことだろう。勝利を意識するあまり、勝利が遠のいていく。まるで禅問答のようなやりとりだが、それがG1優勝への近道だ。G3でできないことが、地元のG1でできるはずがない。昨年12月の京王閣G3決勝、今年1月のいわき平G3準決で見せた今売り出し中の吉田拓矢との戦いが、今の彼をよく表している。

 着として見るなら先着したことがない。しかし、レース内容では敏洋が勝者だった。以前の彼だったら、新人に勝ちたいあまり、勝ち急いで自滅のパターンだったと思うが、そうではなかった。私は、今回の敏洋はやると思う。ラインの3番手に坂口晃輔がいるのも大きい。特に坂口は、敏洋の走りに大きく影響されて今の地位にいる。

 ライバルとなる自力選手も、矢口啓一郎、黒田淳、坂本健太郎と主導権を取りやすい。今節の敏洋に注目したい。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)