【ヤマコウの時は来た!】

 2予10Rに佐藤慎太郎が出走する。今の競輪界において、彼のような追い込み、マーク選手は非常に大事な存在だ。

 2日目1予の村上博幸。まくった稲毛健太を、簡単に差して1着のように見えるが、あの動きをできる追い込み選手は数少ない。間に入ってくる海老根恵太のコースを巧みに封じ込めて、ラインでワンツー。大ギア時代といわれた時期を経て、自力と自力が並んで大味なレースが多くなってきた中で、追い込み選手の存在感も薄くなってきた。

 その競輪に一石を投じるのも慎太郎の役目だ。「いいレースをして2着の方が、内容がない1着よりも価値があると思っている」。そう考える彼に影響を与えた1人に伏見俊昭がいる。先行で戦っていた伏見の後ろを走ることによって、追い込み選手とは何か、マーク選手とは何かを覚えていったという。

 昨年の寛仁親王牌、今年の全日本選抜の決勝で、北日本の4番手を固めた菊地圭尚について「これから圭尚がG1を取ろうと思ったら、周りの力は絶対必要になってくる。だからあの2つのレースは大事だったと思いますよ」と語った。そして、全日本選抜の決勝で北日本の雰囲気ががらりと変わったという。

 このレースは、骨のあるマーク選手がそろった。誰が先行しても、マーク陣のテクニックが堪能できそうだ。後方に置かれても中を鋭く割ってくる選手もいるだろう。それでも、渡辺一成の先行に乗って慎太郎が抜け出すとみる。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)