【ヤマコウの時は来た!】

 ◆10R

 ダービーらしい緊張感があった検車場。参加選手は大会に特別な気持ちを抱いてレースに挑む。それがダービーの重みだろう。

 そのダービーを制したことがある新田祐大は先日行われた香港の世界選手権に出場した。私は世界選を経験したことがなかったが、今年は取材で現場に入り、目に映る全ての光景が新鮮だった。まず、世界チャンピオンになっても40万円ほどの賞金しか出ないレースで、ここまで頑張れる姿に驚いた。日本で見たことがあるデニス・ドミトリエフや、テオ・ボスなどの真剣な表情は、短期登録とは違った緊張感があった。

 その世界を経験すると視野が広がる。日本という小さな舞台で勝敗を競うということが、どれだけの価値があるのかと思ってしまう。新田や渡辺一成は、長くその世界に身を置いてきた。経験した者にしか分からない価値観を持っている。それに魅了されたのがリオ五輪に出場した脇本雄太だろう。

 新田は「競輪選手というベースがあって、世界に挑んでいます」と言う。ダービー優勝やGPを経験して、日本の競輪の良さや足りないところも経験している。世界を経験した直後で視野は確実に広くなっている。特選10Rは、竹内雄作の先行を巻き返す展開になるだろうが、世界選の予選敗退の悔しさを、ここにぶつけてGR賞に駒を進める。(日刊スポーツ評論家・山口幸二)