競輪、楽しんでいますか?

野島記者のクオリティーの高い原稿の直後で実に恥ずかしいのだが、最近現場で感じたことを少々。

当方は今月、大宮F1、宇都宮ミッド×2と、珍しく3回も500バンクで取材する機会があった。近年、びわこ、千葉、熊本と立て続けに廃止、休止になり、今や500は前述2つに高知の3つだけになってしまった。当然、選手が走る機会も少ないわけで、115&116期の新人のみならず、若手の中には「500は初めて」と言う選手が少なからずいた。

25日宇都宮ミッドナイトを優勝した吉松賢二
25日宇都宮ミッドナイトを優勝した吉松賢二

大宮では前検日に「(最終)ホーム前からカマせば押し切れますか?」と聞いてきた若手がいたので「距離も直線も長いからやめた方がいいよ」と答えたのだが、結局ホームからカマして4角で失速したケースも。最近の若手にとっては、今や500は異分野になりつつある。

自転車競技が世界的に250で行われており、競輪自体もスピードアップしている流れもあるのだろう。将来的に千葉は250に、熊本は400に生まれ変わるという。競馬の世界で長距離戦や長距離血統の比重が減ってきているように、500の置かれた状況は楽観視できるものではない。そろそろ定年が見えてきて、会社での居場所がなくなりつつある当方の身の上と重なり、妙に寂しくなる。

25日宇都宮ガールズを優勝した地元梶田舞
25日宇都宮ガールズを優勝した地元梶田舞

だが、500には500の良さがある。展開が緩やかで最終バックまではラインで動くことが多いので、オールドファンにはなじみが深いし、レース自体が分かりやすい。バンクが広く直線が長いので4角からでも多くの選手にもチャンスが残っている。そして何より、追い込み選手がコーナーで無理して突っ込む必要がないので落車が少ない。一瞬で車券が紙くずになる落車が少ないというのは大きな強みだろう。これを書いているうちに、「びわこ道」(特に伸びるコース)という言葉を思い出した。500ならではの味や武器はまだまだある。

14日宇都宮ミッドナイトを優勝した望月一成
14日宇都宮ミッドナイトを優勝した望月一成

かつて、競馬の世界では障害レース廃止論が叫ばれたことがあったが、「文化」として残すという強い意志とスターホースの出現で、近年は再び注目を集めている。500バンクも同様で、日本独自の「文化」として残していかなくてはならないと思う。そしてぜひ「500の鬼」といった選手の出現にも期待したい。現存3場には今後も頑張ってほしいし、応援もしていきたい。

クオリティーの低い原稿に最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。【栗田文人】

4日大宮F1でS級優勝したテオ・ボス(左)。右は2着デニス・ドミトリエフ
4日大宮F1でS級優勝したテオ・ボス(左)。右は2着デニス・ドミトリエフ