競輪、楽しんでいますか?

12日に終了した松戸F2ナイターは、A級が青木瑞樹、チャレンジが望月湧世、ガールズが日野未来の優勝で幕を閉じた。おめでとう!

ガールズを優勝した日野未来
ガールズを優勝した日野未来

今開催の話題の1人が川上真吾(37=東京)だった。今回を最後にバンクを去り、今後はスポーツジムを経営する傍ら、昨年旗揚げしたプロレス団体「相原プロレス」の活動に本格的に力を入れるという。相原というのは地元・町田市の地名だ。

前検日の9日、引退の真意を聞いた。

「僕の好きだった競輪が変わってしまったことですね。かつて競輪はエンターテインメントだった。選手には面白い、おじさん(笑い)がたくさんいた。それが徐々にスポーツになってしまった。職人テイストがなくなったというのかな。しゃれが利かない世界になってしまった。僕には付いていけないな、と感じたことですね」

弟子の平川雅晃(右、長野)、熊谷碩子(左)に祝福される川上真吾
弟子の平川雅晃(右、長野)、熊谷碩子(左)に祝福される川上真吾

「激しく同意」とまでは言わないが、川上の言わんとすることも分かる。確かに昔は今より個性の強い選手が大勢いた。検車場も今よりおおらかだったような気がする。どちらがいいと断じることはできないが、これも時代の流れだろう。

川上は初日の予選1R1番車に組まれ、打鐘2センターからのカマシ先行で1着。引退開催で、敗者戦ではなく予選で逃げ切る選手というのは、なかなかいない。さらに最終日の選抜戦も前受けからの2周半突っ張り先行で2勝目。ともに、集まった知人やファンから大声援を浴び「さすがエンターテイナー」とうならされた。「まだまだできる」と思われつつ舞台から姿を消すのも生きざまか。きっと第2の人生でもファンを“魅せる”ことだろう。お疲れさまでした。

もう1人、取り上げたい選手がいる。高塩譲次(40=栃木)だ。05年のデビューから20年目の来期(7月~)、不惑にして初めてのS級昇格が確実だ。11日に決勝進出を決めた後、話を聞いた。

「やっと、という感じですね。若いころは『必ずS級に上がってやる』という気持ちだったけど、なかなか思った通りにはいかなくて…。その後はずっと、一喜一憂せずに1走1走しっかり走ろう、と思ってやってきました」

デビュー20年目にして初めてS級昇格が確実な高塩譲次
デビュー20年目にして初めてS級昇格が確実な高塩譲次

S級点まであと10人ということころまで迫ったこともある。「今期こそ」と思った絶好調時、骨折で体も夢も打ち砕かれたこともある。ここまで頑張れた理由は何だったのか?

「もちろん家族ですが、それと同県の先輩らの存在ですね。北沢(勝弘=61)さんは街道でよく会うけど、今でも毎日乗っています。野崎(修一=61)さんも毎日バンクで乗っています。あの(神山)雄一郎(55)さんも今でも『結果が出ない』と悩んでいる。長く続けている先輩たちの姿を見て、ここまでやってこられました。これで少しは若い子たちに夢を与えられたかな(笑い)」

人生いろいろ。人それぞれ。こんな話に触れるたび「競輪記者はやめられない」と思う。【栗田文人】