元Jリーガーの北井佑季はG1全日本選抜でも活躍
元Jリーガーの北井佑季はG1全日本選抜でも活躍

競輪界は“アスリート再生工場”だ。

12日に最終日を迎えたG1全日本選抜競輪は、郡司浩平の優勝で幕を閉じたが、郡司の前を走り表彰台に上がった北井佑季(34)は、町田ゼルビアをはじめ4チームを渡り歩いた元Jリーガー。

松谷秀幸はプロ野球選手からの転向組
松谷秀幸はプロ野球選手からの転向組

郡司の後ろを回った松谷秀幸(41)は、ヤクルトスワローズ出身の元プロ野球選手だ。1度は夢破れたかもしれないが、第2の人生ではJ1や1軍のレギュラークラスの年俸と遜色ない賞金を稼ぐのだから、華麗なる転身といえよう。

北野良栄は不惑を迎えてもさわやかだ
北野良栄は不惑を迎えてもさわやかだ

全日本選抜と時を同じくして行われた久留米ミッドナイトに参戦した北野良栄(40)は、松井秀喜さんを輩出した石川の名門・星稜高出身で02年から5年間、福岡ソフトバンクホークスに在籍したキャリアがある。

同開催は「ホークス杯」のタイトルでもあり、前検日には「それなら、僕のための番組を作ってもらえるんですよね!」と笑いを誘っていた。もちろん、そんな優遇措置があるはずもないが、やはりホークス杯のタイトルは誰にも渡せないという気迫が勝ったのか、見事に優勝してみせた。

鈴木康平は教員の職をなげうって輪界入りした
鈴木康平は教員の職をなげうって輪界入りした

チャレンジ戦には、異色の転向組もいた。鈴木康平(28)は、自転車競技の強豪校の静岡・星陵高で中長距離を中心に活躍。大学卒業後は教員となり静岡北高の自転車競技部監督に就任。日高裕太はじめ競輪選手を輩出するなどコーチとしても実績を残した。

しかし、妹の奈央がガールズケイリン選手となり、高校時代にしのぎを削った渡辺雄太や清水裕友の活躍に刺激を受けてプロを目指すことを決意。123期として昨年5月にデビューした。まだ粗削りの面は否めないが、勝ち上がりでは2周突っ張り先行を連発。「開催初日(2月9日)が妻と妹の誕生日だったので、2日遅れのバースデープレゼントを持って帰りたい」と意気込んだ決勝は、同期の山元大夢(24)にまくられてデビュー初優勝はお預けに。それでも「走る度に、欲が出てきました」と競輪選手としての闘争心にも火が付いており、今後が楽しみな1人だ。

スポーツ界でセカンドキャリアの話はネガティブなイメージを抱きがちだが、競輪選手という選択肢は新たな可能性を模索するにはうってつけだ。決して自転車エリートばかりではない、選手それぞれの人生が背景にあるから、競輪は面白い。【中嶋聡史】