【ヤマコウの時は来た!】

 ◆10R:特選 前橋での寬仁親王牌は10年以来6年ぶり。前橋で印象深いのは11年高松宮記念杯の深谷知広で、デビュー最速のG1優勝だった。当時の深谷は北の湖ばりに憎らしかった。

 今回、期待するのは木暮安由。12年のオールスター決勝で、武田豊樹の後ろを回って初タイトルを狙ったが無念の落車。経験不足による焦りが原因だった。その後、武田や平原康多の前を回って、関東の中で確固たる地位を築いてきた。9月の地元F1も完全VでG1戴冠の機が熟してきた。

 自転車を降りると、びっくりするほどの好青年で驚く。それがレースになると、変幻自在なしなやかな走りに変わる。対戦相手としてはもっとも嫌なタイプだった。根が優しい彼は、無理して今のスタイルで戦っているのかと思ってしまう。自分自身を奮い立たせて走っているのだろうか。

 松戸オールスターの決勝で平原-武田の3番手を回ったが、私は単騎でもよかったと思っている。決勝までの流れがあるから一概には言えないが、今の木暮に必要なのは、関東の中での「牙」だと思う。必要以上にもめることはないが、ラインの中でも牙を見せることは大切だ。

 今日のメンバーを見渡すと、伊藤裕貴-柴崎淳もいるが、先行するのは雨谷一樹ではないか。「地元の木暮さんに報える競走を」と前検日に話していたが、責任感という点で関東両者に軍配が上がる。稲垣裕之、渡辺一成の巻き返しを封じて、白星スタートを飾る。

(日刊スポーツ評論家・山口幸二)