準決12Rを見て鳥肌が立った。まさか山口拳矢がダービー王の松浦悠士を不発にさせるとは…。

競輪ファンの1人として、このままトップを目指して欲しい気持ちもあるが、現役時代に吉岡稔真氏や村上義弘選手をそばで見てきただけに、父親として「プレッシャーと向き合う人生はかわいそうだ」と思ったりもする。

息子が出る決勝を、あーだこーだと書くと誤解を生むので、今日のコラムは、松浦が王者として受けて立ったレース後の様子と、私の感想を伝えようと思う。

準決は不発の3着だった松浦悠士
準決は不発の3着だった松浦悠士

拳矢の強さが印象に残ったが、あれは松浦が受けて立ったから成り立つレースだったと思う。G1の決勝なら簡単に新人選手を出させて、自らの力でねじ伏せようとするレースはしない。あの手この手で勝負しようとするはずだ。言うなれば「お手並み拝見」というやつ。松浦クラスになると、勝負はG1だと思っているからだ。

レース後の松浦は堂々としていた。「恥ずかしいのひと言。松坂(洋平)さんが前をたたいてくれるかな、と人任せにしてしまったのが敗因。今すぐ赤パンを脱ぎたい」と冗談半分で答えてくれたが、どこかに本音も見え隠れする。

思えば、ダービーを優勝して、松浦は「王者としてどういう走りがふさわしいか」を常にファンに提示しながら走っているように感じる。函館G3決勝の野口裕史の前受けが成功しなかったのは「やっぱり強い者より(初手で)前にいたら勝負にならない」と我々に思わせてくれた。

ダービー王の称号は、これからずっとついて回る。それはエースの証しであり、松浦がこれから向き合っていかなければならない宿命でもある。(日刊スポーツ評論家)

※ヤマコウコラムは次男拳矢が決勝戦に進出したため、予想はありません。