昨年、113期以降の選手がグレードレースを続けて優勝し、24年は若い勢力がもっと活躍すると思ったが、今年はまだ113期以降でG3を優勝した選手はいない。

若手の成長に何が足りないのかを考えると、松浦悠士や清水裕友、郡司浩平や古性優作らとは、勝負に対する執着心以外では、自分の地位に対する責任感が違うと思う。

ヤマコウは古性優作が王者と言われる理由に着目した
ヤマコウは古性優作が王者と言われる理由に着目した

例えば奈良G3決勝。近畿地区の選手が3つに分かれ、脇本雄太と古性優作がもがき合い、三谷竜生がまくって優勝した。「もがき合ったら地元有利だよね」という簡単な構図ではなかった。脇本雄太は復活への手がかりをつかみたいため連日、前受けをしなかった。奈良のような小回りバンクでは、外に浮かされ勝てない可能性があるからだ。それを分かっていた王者の古性は受けて立った。あとの選手は脇本に対して先まくりしか勝機がない。古性は駆けさせられることも受け入れて前を取った。残り2周半で脇本が来ないので古性は腹をくくった。あの時点で引いてまくり不発が、最強王者として一番してはならないレースだった。

結果、脇本と踏み合い混戦を菅田壱道がまくった。守沢太志が完調だったら北日本両者で決まったと思う。あのレースは地元に遠慮したのではなく、自分のレースを貫いた結果。地元三谷兄弟のワンツー(次男将太が2着)は偶然の産物だった。

古性がなぜ王者と言われるのか? それはどんな状況でも自分と勝負するからだ。勝負しない選手が多い中、古性の存在意義は大きいと思う。(日刊スポーツ評論家)