【藤代信也・GP 2022 こう買う】(2)

浅井康太に勝機はない。15年の京王閣グランプリで導き出した、第1の結論だった。

当時の浅井といえば、中部ラインで深谷知広を目標にするレースが定番。数々の連係実績を積み上げていたが、なぜかグランプリでは、なかなか成果を挙げられない。

初出場だった11年・平塚は、先行した深谷を利して番手まくり。絶好の展開に持ち込みながらも末を欠き、後ろの山口幸二(優勝)、さらに武田豊樹(2着)に抜かれて3着に終わった。

続く12年・京王閣は、同じく先行の深谷を番手で追走したが、3番手まくりで1着の村上義弘に屈し、成田和也の強襲にも遭い、またも3着。

14年・岸和田は、主導権を取れなかった深谷と共倒れになり、優勝した武田の5着だった。

そして、15年。頼みの深谷が出場できず、浅井は単騎となった。「前年までことごとくチャンスをつぶして、勝ち運に見放された。孤立無援だし、出番は回ってこないだろう」。そんな思考が頭の中を駆け巡り、第2の結論「平原康多の頭勝負」にたどり着いた。

結果は、浅井の優勝。縦横無尽の立ち回りから直線で突き抜け、待望の初戴冠を果たした。2着は新田祐大で、平原は3着に惜敗。

目標を失い苦境に立たされたはずの浅井が、この日は皮肉にも躍動感に満ちあふれていた。

ラインを組むことはレースを有利に運ぶために必要不可欠だが、同時に「前で駆けてくれる人のために」「後ろで仕事をしてくれる人のために」という使命感、プレッシャーを伴う。舞台がグランプリとなれば、その重さは計り知れない。

単騎の戦いは展開面のハンディを負う反面、身軽で気楽だ。今年のメンバーを見て、浅井と被る選手が目に留まった。(ニッカンスポーツ・コム公営競技担当)