最近は、マンチェスター・ユナイテッドの話題が度々挙がります。1990年台はベッカムらを中心にファーガソン監督が黄金時代を築きました。2010年以降はなかなか難しい状況で、同じ街のマンチェスター・シティーにその座を完全に奪われた形となりました。しかし、ここにきてそのマンチェスター・ユナイテッドに動きが見られそうです。前々回“アメリカの投資家の手のひらの上で転がされかねない”と現地で話題となっていることを中心にお話ししましたが、今回はもう少し掘り下げた形です。

現地時間の24日が2回目の入札期限ということで、クラブ購入希望者からの入札が行われるはずでした。現地情報によると、どうやら2日ほど遅れた26日、正式に2回目の入札があったようです。実際に入札に参加しているのは石油化学会社イオネスのジム・ラトクリフ卿と、カタールの銀行家シェイク・ジャシム・ビン・ハマド・アル・タニ氏の2人とされています。

ラトクリフ氏は2018年時点での資産は約2兆円とも言われており、イギリスNo.1の資産家です。CEOを自ら務め、60%の株式を保有する石油化学企業・INEOSは6.4兆円の年間売上高を誇り、従業員は22カ国に1万8500人も抱える超大企業です。「雇われ経営者」から「オーナー経営者」になった近年イギリスの誇る敏腕経営者の1人とも言えます。

また、カタールのシェイク・ジャシム・ビン・ハマド・アル・タニ氏はカタール・イスラム銀行会長を務めており、元首相の息子でもあります。その資産は400億ポンド(約6兆6100億円)以上とされ、こちらも世界を代表する富豪の1人です。しかしながら、現地の速報情報からすると、どうやら2者共に入札した金額は現オーナーの希望金額である約60億ポンド(9890億円)を下回っているということで話は進んでいないようで、さらに3回目の入札があるのかどうかはまだわかりません。現オーナーのグレイザー家と協力し、この案件を仕切っているアメリカの銀行であるレイン・グループからしてみれば、資産保持額からすればまだまだということなのでしょうか。

グレイザー一家についても実際に売却するかは決まっていないという情報も流れる中、当初2005年に8億ポンドで購入したものを45億から55億ポンド近くでの売却を希望していたという情報もあり、これだけでも大もうけなのですがさらにお金を上積みしているレイン・グループにとってもひともうけの機会と見ている可能性もあります。

合わせるように株価も15USドルあたりをフラフラしていたのですが、このニュースが出た瞬間に22.5USドルを超える上昇ぶり。この2、3日は20ドル前後。ファンはグレイザー家の呪いという言葉を口に出すほど現体制に不満を募らせているので、新しい船出には期待値を募らせています。これからかもしれませんが、株価もさらなる飛躍を遂げてもおかしくはありません。

新たな中東のオイルマネーが進出してくるのか、それとも幼少期からのファンだったと言われているイギリス人の手に落ちるのか、そして夏の大補強はあるのか新たな風に期待したいです。

【酒井浩之】(ニッカンスポーツ・コム/サッカーコラム「フットボール金融論」)