世界と戦える能力を秘めた長身FWとして期待されFW杉本健勇(25=セレッソ大阪)は最後の最後に日本代表から漏れた。今回、宇佐美ら同世代5人が初のワールドカップを射止めたが、落選を大きな刺激に変えて逆転を誓った。

 悔しくない、はずはない。杉本が大きな目標に設定したW杯ロシア大会。昨年末、天皇杯準決勝、決勝の欠場を決断してまで左足首の手術に踏み切ったのも、W杯に向けて不安をすべて取り除くためだった。しかし、最後の最後に選から漏れた。「自分もそこに行けるチャンスがあった。でも入らなかった。それまでのこと」。悔しさがにじむ。

 「プラチナ世代」と呼ばれる92年生まれ。タレントがそろい、元日本代表MF小野らの「黄金世代」と比較され、称された。特にインパクトを残したのが09年のU-17W杯。1次リーグで日本はネイマール率いるブラジルと2-3の激闘を演じた。その時のメンバーに宇佐美、柴崎、そして杉本。今回の日本代表には宇佐美、柴崎に武藤、93年生まれの同学年・遠藤、大島も含め同世代5人が選出されたが、杉本は外れた。

 特に宇佐美とは下部組織の時代から「飛び抜けた存在」で比較されてきた。当時の杉本を指導した元C大阪ユース監督の副島博志氏(現大阪学芸高女子サッカー部監督)が振り返る。「大阪では健勇と宇佐美の2人が飛び抜けていた。宇佐美は左ハーフだったから、健勇をあえて右で使ってマッチアップさせた。サイドの攻防はそりゃ見応えがありましたよ。スピード、技術とも抜けていてお互いが認め合っていた」。お互いを高め合う存在だった。

 「宇佐美は衝撃的な選手だった。比べられるもんじゃない」という杉本だが「同じ年の選手は宇佐美に追いつくことしか考えられんかった。彼の存在がなかったら、今の俺もおらんかもしれん」と言う。それだけにブラジルと渡り合った9年前に続くW杯での“共闘”を楽しみにしていた。かなわなかったが「宇佐美も俺もいろんなことを経験してここまできた。(W杯代表に)入らなかったのは自分の実力」と潔い。

 187センチの長身で足元の技術もある長身FWは、世界と張り合える可能性を認められている。今回の落選、悔しさはさらに高めていく刺激に変えるしかない。「全力で応援したいなと思う。もちろん、俺も負けへんよ」。点が取れない日本人。はい上がる杉本が、その永遠の課題を克服する男になる。【実藤健一】

 ◆杉本健勇(すぎもと・けんゆう)1992年(平4)11月18日、大阪府生まれ。C大阪ユースから10年にトップチーム。高校2年時にクラブユース選手権で優勝し、大会MVP選出。11年7月にJリーグ初出場。東京V、川崎Fなどを経て、16年にC大阪復帰。U-15世代から代表経験があり、昨夏のW杯アジア最終予選でA代表初選出。国際Aマッチ6試合1得点。187センチ、79キロ。血液型A。