昨年12月に引退した元なでしこジャパンの澤穂希さん(37)が、背水のチームに活を入れた。3日、堺市内で行われた練習を電撃訪問。自力でのリオデジャネイロ五輪出場が消滅した後輩に激励の言葉をかけた一方、今日4日の中国戦に向けて「本気で負けられないと思って戦っている選手が何人いるのか」と、厳しい言葉で奮起を促した。

 「澤ロス」に苦しむチームを、澤さんが激励した。引退後初めて練習場を訪問。中国戦に備えて練習が非公開になったタイミングで取材に応じ「みんなの顔を見に来ました。前向きな言葉で、元気を与えられたら」。穏やかな口調で切り出したが、次第に秘めた思いがあふれ出した。「現場で伝えられない、もどかしさがあって」。結果が伴わない後輩を、メディアを通じ手厳しく鼓舞した。

 澤さん 本当にこの試合に勝つ、絶対に出場権を獲得する、負けられないという気持ちで戦っている選手が何人いるのかな、と外から見ていて思いました。どこか遠慮していたり、他人任せのところが見られた。負けられないと思っているなら、グラウンドで表現してほしい。気持ちが足りない。正直そう感じました。

 もちろん、選手への気遣いも忘れなかった。主将を引き継いだMF宮間には「1人で背負わないでほしい。ほかの選手にも重いリュックを背負ってもらえばいい。追い詰めないで」と独特の言い回しでメッセージ。取材対応後はクラブハウスへ入り、選手数人と会話を交わした。

 報道陣から、金言を伝え聞いた宮間は「気にかけてもらっているので責任も感じる。『よくやった』と言ってもらえるような試合をしたい」。自分に言い聞かせるように受け止めた。

 今日の中国戦は、引き分け以下に終われば五輪出場が極めて難しくなる。澤さんは「勝たないと最悪のことも考えられる」とも指摘した。幾多の逆境を背中で支えてきたが、今度は言葉でチームを救う。【上田悠太】