タイ代表監督の西野朗氏の他にも、同国で活躍する日本人指導者はいる。

U-23日本代表が同アジア選手権の事前合宿(2日~5日)で練習場を使用した「サムットプラカーン・シティーFC」の村山哲也元監督(45)は、19年シーズンに同クラブGMに就任。6月、監督の電撃辞任を受けて緊急登板すると、チームを過去最高の6位に引き上げた。

そんな村山氏がタイで直面したのは、“国民性の違い”。実戦形式の練習中、プレーを止めて指導をする「ゲームフリーズ」を行うと、人前で指導されることを嫌うタイの選手は、機嫌を損ねてしまうという。こうした国民性の違いについては、西野監督も「タイの選手にあまり厳しく言うと、なかなか反発してこない。国民性もあるけど、まだまだ厳しさが足りない」と話していた。

タイに合わせた方法にシフトしつつも、村山氏は日本流の組織的なサッカーをチームに植え付け、結果を残した。19年限りで退任となったが、チームは新たに石井正忠監督(52)を迎え、変わらぬ日本流の強化を図っている。これも村山氏の功績が認められた証し。異国に渡った日本人指導者は、サッカーだけでは済まないさまざまな壁と向き合い、奮闘している。(バンコク=杉山理紗)

◆村山哲也(むらやま・てつや)1974年(昭49)10月20日、東京都生まれ。三菱養和SCユースから日大へ進学。卒業後はガンバ大阪、清水エスパルス、ジェフ千葉で育成コーチや監督、分析、スカウトなどを務めた。12年にサンフレッチェ広島のコーチに就任、15年からは同スカウトとして活躍。19年1月にサムットプラカーン・シティーFCに参画した。176センチ、82キロ。