元サッカー日本代表FWでガンバ大阪などで活躍した播戸竜二氏(42)が、20日公開の映画「孤狼の血 LEVEL2」で俳優デビューを飾った。

松坂桃李、鈴木亮平ら豪華キャストとともに、播戸氏は賭場で真剣勝負する男を演じる。サッカー選手を引退し、約2年。Jリーグ特任理事など重責を担う一方で、役者にも挑戦した心意気を日刊スポーツに語った。

-デビュー作は、賭場で真剣勝負する迫力ある男の役だった。セリフこそなかったが、ぎらついた目など強烈な印象を残した。本人の率直な感想、自己採点は

播戸氏 完成版を最初に見たのが今年4月。自分が映画のどこに出ているのか、自分の出演場面は(見た人に)演技している感じに見えるのかな? とかドキドキしていて、実際に見た時はうれしかった。自己採点に関してはサッカーも同じで、全部やりきったと思っているけど、「もっと、よくはできるよね」という思いはある。ただ、こればかりは他人の評価が大事ですね。

-そもそも俳優のオファーはどうやって届いたのか

播戸氏 自分が世話になっているサッカー関係者と東映のプロデューサー(紀伊宗之氏)が幼なじみだった縁で、19年夏に「1度映画にどうですか」と言われ「じゃあお願いします」と話していた。それで20年夏、役所広司さんが18年に主演した「孤狼の血」の続編への出演に決まった。台本も送られてきて「賭場の客・播戸竜二」と書いてあって、どんな感じやろな、どうなんやろなとドキドキしました。

-サッカー解説でも事前に勉強していることがよく分かる。勉強熱心な性格だからこそ、今回は相当勉強したのでは

播戸氏 資料をいただき、いろいろ勉強しようと思ったが、何が何か、さっぱり分からない。性格上、最低限の準備はするけど深掘りはしない。やりすぎても即興性がなくなる。そこの絶妙のバランスを考えた。解説でもそう、あまり調べすぎたら(データなどに)引っぱられることがある。生の現場で楽しみたい自分がいたから、前日にリハーサルをして、こういうことなんやと理解し、分からないことは質問した。本番当日は、それをやるだけで準備はできていました。

-ロケは昨秋の広島・呉市でほぼ1日費やした。渋川清彦、早乙女太一ら俳優陣とともに、NHK連続テレビ小説「エール」にも出演した杉田雷麟(らいる)とは交流もあったとか

播戸氏 自分が出演した何秒かの場面に、あれだけの時間をかけていると思うと、映画は果てしない。プロモーションも含め、本当に細かく考えて時間もかけている。ロケは前日に広島駅に到着し、呉市に向かうマイクロバスの中に、雷麟君(当時17歳)がいた。俳優の先輩やからいろいろ教えてもらった。せりふはどう覚えているの? とか。彼は「将来は日本を代表する役者になりたいです」と言っていて「応援するよ」と。でも「オレは今回、アカデミー賞新人賞を狙ってるから」って、返しておきました。あくまでも冗談です(笑い)。

-現役時代は元日のサッカー天皇杯決勝、日本代表で国際試合も経験した。解説ではNHKテレビの生放送で、100分以上しゃべることもある。俳優との緊張感の違いは

播戸氏 もちろん緊張感は全然違った。ただ、98年4月11日の清水エスパルス戦でJリーグデビューしたけど、当時18歳で、何も分からなかった。それが41歳(撮影当時)になって、映画で同じような感覚を味わえたのは、本当に幸せだった。Jリーグも映画も要領は何も分からなかったけど、2度とないデビューを2度経験できたのは貴重な経験でした。

-現在はJリーグ特任理事、日本サッカー協会アスリート委員、WEリーグ理事も務める。俳優については今後、どうかかわっていきたいか

播戸氏 次も呼ばれたらチャレンジはしたい。ただ、自分が出演したいといって出られるものではない。もしオファーがあれば、その時は全力でやります。今回はせりふがなかったけど、次は一言、二言あればいいかな。次もなければ、あんまり成長してないふうになるから(笑い)。もちろん、サッカーという軸が自分にあるから、そこは絶対に頑張っていきます。

-最後にサッカー日本代表のワールドカップ(W杯)カタール大会が来年に迫った。アジア最終予選を突破していないが、どんな期待をしているか

播戸氏 日本が本大会に出場する前提で言えば、過去最高のベスト8は行ってほしい。日本サッカー協会は2050年までにW杯優勝という目標を掲げていて、カタール大会を終えれば、あと7大会しかない。来年に8強の実績を残しておかないと、ベスト4、決勝進出、優勝への道のりを考えると時間はない。意外に「50年までに優勝」は世間に広まっておらず、自分が言い続けて、みんなの目線を同じにしたい。今回ベスト8を逃せば、50年の優勝はないぞ、マストやぞと。「したい」ではだめ、「するんや」という心意気。「孤狼の血 LEVEL2」も、ヒットしたらいい、じゃなく「させるんや」です。オレの力は全然及ばないけど、やれる中で全力でやります。

◆「孤狼の血(ころうのち) LEVEL2」 18年公開の前作「狐狼の血」は約63万人動員。広島県の架空都市である呉原市を舞台に、暴力団の抗争と組織に食い込むベテラン刑事・大上章吾(役所広司)の姿を鮮烈に描き、第42回日本アカデミー賞を始め、計32の映画賞を受賞。続編となる今作は、その3年後の若手刑事・日岡秀一(松坂桃李)を描く完全オリジナルストーリー。白石和弥監督。

◆播戸竜二(ばんど・りゅうじ)1979年(昭54)8月2日、兵庫・姫路市生まれ。琴丘高から98年G大阪入り。札幌、神戸、G大阪、C大阪、鳥栖、大宮、琉球と移籍し、19年9月にG大阪と1日契約を結んで現役引退を表明。J1通算325試合87得点、国際Aマッチ通算7試合2得点。20年からJリーグ特任理事、日本協会アスリート委員会委員、サッカー解説で活躍、自らのYouTubeチャンネルも開設。21年からWEリーグ理事就任。171センチ、67キロ。