本当に強い。なでしこジャパン(FIFAランキング11位)が3-1でノルウェー(同12位)を振り切り、準優勝した15年カナダ大会以来2大会ぶりの8強入りを決めた。

1-1の後半5分に勝ち越した。敵陣深く攻め込むと、ゴール前で相手選手がたまらず横パス。走り込んできた右ウイングバック清水梨紗(ウェストハム)がさらい、右足で決勝ゴールを押し込んだ。

アイドル的なルックスでSNS等でも「天使すぎる」などと高い人気を誇る清水だが、プレーは真面目そのもの。1試合を通じ、何度も上下動を繰り返す運動量とスピードが売りだ。

清水が日テレ・メニーナ(日テレ東京Vの下部組織)に入団した時に監督を務めていた寺谷真弓さん(現東京Vアカデミーダイレクター)は「(入団時に)梨紗はスピードはあったけど、技術的には全然高くなかった。周りが上手かったから一緒にやっているうちに上手くなったイメージ。もともとFWでしたけど、献身的に頑張って走ったり、真面目にやれる感じがあったのでサイドの選手だなと思っていた」と振り返る。

この日も、清水が相手ゴール前まで抜け目なく走り込んでいったことがV弾につながった。

さらには36分、今大会のシンデレラガール宮沢ひなた(マイナビ仙台)が決める。50メートル6秒8の快足MFで、MF藤野あおば(日テレ東京V)からのスルーパスに抜け出し、左足でゴール右へ流し込んだ。男女を通じて日本のW杯1大会最多タイとなる5点目で、優勝した11年ドイツ大会の澤穂希の記録に並んだ。2戦連発も、女子では澤以来2度目。大会の得点ランク首位も守った。

接戦の前半は1-1で折り返していた。

15分、宮沢の左サイドからのクロスが相手MFエンゲン(バルセロナ)の伸ばした右足に当たってコースが変わり、そのままゴールイン。先制のオウンゴール(O・G)となった。

しかし5分後に追いつかれる。今大会初失点。高さは日本が最も警戒していた部分だったが、右クロスから相手MFレイテン(チェルシー)にヘディングシュートを決められ、同点とされた。

1-1のまま終盤までもつれれば、嫌な雰囲気も漂うところだっただけに、清水の活躍、宮沢のダメ押し弾は値千金と呼ぶにふさわしいものとなった。司令塔MF長谷川唯(マンチェスター・シティー)も攻守を調律した。

その後はDF熊谷紗希主将(ローマ)を中心に守り切った。スウェーデン-米国戦の勝者、FIFAランク3位と1位、どちらが来ても優勝候補チームとの大一番になる11日の準々決勝(オークランド)へ駒を進めた。

池田太監督は「タフなゲームを予想していた。ノルウェーもストロングを生かしてきたが、選手全員ハードワークしてくれた」とイレブンを評価。「最初は攻めの糸口を見つけられなかったが、後半は修正して追加点を奪えた。もう少し前に行ってもいい、サイドをうまく使えればいい」とハーフタイムに攻撃面を修正したことを明かした。采配も見事にはまり、優勝経験国同士の対決で快勝した。

殊勲の清水も「1-1になっても、誰1人ネガティブな言葉はなかった。19年(16強に終わった前回フランス大会)は悔しい思いをしたし、まだまだこれからだけど、1つ壁を破れたかな」と納得。「みんな明るくて、全員が同じ方向を向いている。どんどん勝ち上がっていきたい」と満足するつもりはない。

8年ぶりのベスト8進出を果たし、なでしこの世界一返り咲きが着実に近付いてきた。【千葉修宏】