日本に輝く蛍の光!

 5大会連続の五輪出場を目指すU-22(22歳以下)日本代表のMF山口蛍(20=C大阪)が、エース封じの刺客になる。ロンドン五輪への初陣となるアジア2次予選クウェート戦(19、23日)に向け、15日は合宿地の静岡県内で2部練習を実施。クウェートはA代表で23試合10得点を挙げる点取り屋のユセフ・ナセル(20)を擁するが、ボランチで先発濃厚な山口は「ファウルしてでも止める」と宣言。捨て身の守備で、ロンドンへの道を切り開く。

 森林に囲まれ、ホトトギスのさえずりが響く練習場に、決戦に向けた緊迫感が漂ってきた。その中央で強烈な光を放つ蛍がいた。実戦練習で山村主将とダブルボランチを組み、連係や守備位置を確認していく。前線にスペースが空くと、強気に上がってミドルシュートを放った。A代表でも10得点を挙げるクウェートの点取り屋・ナセル封じのイメージを高めていった。

 「ファーストDFは簡単に前を向かせてはいけないですし、攻撃を遅らせることが大事。カウンターが速いので、ファウルしてでも止める。早めにつぶしてシュートまで持って行かせないようにしたいです」。

 蛍が輝く季節だ。Jリーグが開幕する3年前に誕生した際、「どんな暗闇でも明るい光を放ち続けられますように」という願いを込めて蛍と名付けられた。この季節、三重県名張市の実家では窓を開けると、蛍が部屋に舞い込んでくるという。苦労人でC大阪下部組織に所属した中学時代は三重から電車で片道2時間かけ、大阪の練習場へ通った。日本を代表する選手になる夢があったから、苦になったことは1度もない。今季、C大阪ではリーグ戦3試合に途中出場しただけ。暗闇にいても腐らず、光り輝こうと必死だった。

 蛍には世界で輝く夢がある。今合宿前にはC大阪で元同僚のドルトムントMF香川から激励を受けた。五輪本戦で一緒にプレーする可能性もあり「調子いいみたいやな。頑張ってこい」と声をかけられたという。

 「五輪で活躍すれば欧州のクラブの人に見てもらえる。ボクも真司君のように将来は海外でやりたい」。

 まずはクウェートの点取り屋を封じ、ロンドンへの道を切り開く。その先に、蛍が輝く世界が見えてくる。【益子浩一】