英国から若きスピードスターが凱旋(がいせん)する。日本協会は25日、W杯アジア3次予選最終戦ウズベキスタン戦(29日、豊田ス)のメンバー23人を発表。欧州組11人を加え、FW宮市亮(19=ボルトン)が初招集された。Jリーグを経験せず18歳でアーセナルと契約し、期限付き移籍先のボルトンでも18日のFA杯でイングランド初ゴールを決めたばかり。アルベルト・ザッケローニ監督(58)が「将来は大物になると感じた」と絶賛する19歳が、いよいよ国内でベールを脱ぐ。

 あいさつ代わりの1ゴールで英国を驚かせたボルトンFW宮市がついにA代表入りした。FA杯ミルウォール戦での見事な得点から約1週間。リストの最後に「宮市亮」、その名があった。今回のメンバー唯一の初選出。ケガの影響で本田(CSKAモスクワ)は不在だが、残る欧州組は主力ばかりの豪華布陣。宮市は早くも指揮官を魅了している。ザッケローニ監督に「最近の試合を見て将来は大物になると感じた。間近で見たかった」とまで言わせた。

 24日のアイスランド戦にも同世代の久保(京都)らが初招集されたが、あくまで“育成枠”。結局試合出場はなかった。だが宮市は違う。純粋な戦力としての招集。指揮官は同じロンドン五輪世代の宇佐美(Bミュンヘン)らと比較し、こう説明。「これまで呼んだ若手より1歩前に行っている。可能性があればプレーのチャンスがあるだろう」。生まれ育った愛知でデビューを飾る可能性が高い。

 100メートルを10秒台で駆け抜けるスピードはサッカー界でもトップレベル。この陸上選手並みの脚力に、洗練されたテクニックが加わる。ドリブル突破からシュートに持ち込む一連の流れには、これまでの日本サッカー界の域を超えた魅力が詰まっている。愛知・中京大中京高時代には日欧トップクラブの練習に招かれ、ほぼすべてのクラブの外国人指導者から「今すぐ契約できないか」と口説かれた。10年12月に名将ベンゲル率いるアーセナルと契約。卒業前に渡英したため、国内でのプレーは10年12月31日の全国高校選手権・久御山戦以来となる。

 若き逸材も世代別代表ではずっと憂き目に遭ってきた。高校ではFWでゴールを量産していたが、U-16ではDFで招集され右サイドバックに回されたことも。U-17でもレギュラーにはなれなかった。だからこそ、日の丸には思い入れがある。2度出場した選手権はともに初戦敗退で、国内でのプレーはベールに包まれたままの感がある。未知なる切り札-。期待は高まる一方。アーセナルでもまれ、フェイエノールトとボルトンの公式戦でゴールも決めている。10代の“最速”アタッカーがザックジャパンに異次元のスピードをもたらす。【八反誠】<宮市亮アラカルト>

 ◆生まれ

 1992年(平4)12月14日、名古屋市。

 ◆サッカーは

 貴船小3年の時に地元の「シルフィードFC」で始める。

 ◆争奪戦

 08年にJリーグ8クラブの下部組織や全国強豪校の誘いを受けたが、伊藤翔(現清水)らFWの育成に定評のある中京大中京に進む。

 ◆快足

 100メートルは10秒84。50メートルの自己申告タイムは「5秒6です」。

 ◆愛称

 ドリブル突破が持ち味で地元愛知では「和製C・ロナルド」と呼ばれていたが、渡欧後はすでに幾つもの呼び名がついた。

 ◆イケメン

 整った顔立ちで、ゼニトのロシア代表FWアルシャビン似。

 ◆サイズ

 183センチ、71キロ。利き足は右。